1-⑨
◇ ◇ ◇
「結局雨降らなかったね」
「そうだな、それにしても――」
と、このような雑談をしながら、昼食の海鮮丼を頬張る。
「ね、沢戸ってどのくらいの頻度で旅行してるの?」
「頻度か、うーん、時間とお金さえあれば行くから、ちょっと長い休みの時はよく行ってるな」
よく行ってるとは言ったものの、自分はよく節約をするのでそんな休みの度に毎回行ってる訳ではない。
「そう言えば、なんで旅行してるとかの理由ってあったりする?」
そう川原に訊かれた途端、色々な記憶が鮮明に蘇ってきた。「あ、いや、無いなら別にいいよ」と川原は手を出して、その手を横に振る。
「いや、ある、けど……」
理由は、在る。間違いなく在る。ただ、それを他人に打ち明ける程の勇気なんて云うモノは明らかに僕には無い。
◇ ◇ ◇
昼食も食べ終え、スマートフォンの気象予報アプリで、生配信の気象予報を見る。このアプリはよく見るという訳では無いが、偶に見るのが割と好きだ。自分の住む地域の予報に入る。
(この地域では、広い範囲でパラパラッと雨が降るかもしれません。一部では、朝頃まで続く所もあるようです。念の為傘を持っておいた方がいいかもしれません……)
――やっぱり、雨、降るんじゃん。でも、今は晴れてる。
藤色の雲 野田 琳仁 @milk4192
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