1-⑧

◇ ◇ ◇


 ようやく山頂に着いた。登り始めてから大体2時間半くらいだろうかいや、もう少し短い。普段からあまり運動をしないためか大分疲れた。そんな自分とは裏腹に、川原には疲れた様子は無い。やはり慣れているのだろう。川原はあまり危険な山には登らないらしく、殆どこのような7〜800mの山にしか登らないらしい。勿論、富士山のような日本一の山には登ると登頂中に話していた。

 「さわどー」と呼ぶ声が聞こえたので、疲れて地面を眺めていた自分の顔を上げる。目の前に広がる崖の下に自分が3時間程前まで歩いていた温泉街や、その近くの湖、それを取り囲む森までもが一望できた。

「どう? 沢戸、山頂からの景色は」

「そうだなぁ、色々あるけど――なにより、空が近い」

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