1-⑦
◇ ◇ ◇
――いや、まさか山巡りで沢戸に会うとはねぇ……成人式にも来なかったからなぁ、沢戸。
「なぁ川原? 川原って、山好きだったっけ?」
「うーん、そうだねぇ、ずっと好きだったけど中学の頃は友達にも言ってなかったからなぁ。でも、沢戸は中学の頃からずっと雲好きだよね」
「え――覚えてるの⁈」
あれ程あからさまに表に出していたあの沢戸を大人になってからでも見たら十中八九思い出すだろう。少なくとも、沢戸の事をどうでもいいと思っていた奴らじゃなければ、私がオバサンにならない限りは思い出すだろう。
「だって、あからさまに好きだったでしょ、雲。休み時間は窓開けて、『今日の雲はどうだー?』って言っていっつも、空見てたでしょー」
「よくそこまで覚えてるな……はぁ、はぁ、それにしても、疲れたー」
疲れた? まだ1時間も登って無いのに?
「沢戸って体力ないの? 十分くらい休憩する?」
「あ、あぁ。そうする。」
沢戸は鞄から水筒を取り出してその中身を口に含む。飲み込むと「ふぅ……」と息を吐き、空を見上げる。
「雨降るかもな」
「え? 天気予報では雨マークはなかったけど、なんで?」
「うーん…………なんて言うかなぁ、感覚?」
「自分でも分からないの?」
「まぁ、毎日こうやって雲見てれば少しくらい予想できるようになる……と思う…………」
雨、か。…………あ、そういえば………………雨具忘れた。
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