1-⑥
「普段、山って登らないんでしょう?」
「えぇ、登山なんて中三の頃に家族と登って以来初めてですよ。僕は今20歳なので六年ぶりになります。」
「あ! じゃあ、同い年なんですね。私、今度の11月に21歳になるんですよ。……で、なんで山登ろうと思ったんですか?」
「えぇと……まぁ、雲ですよ。雲を見たいんです。」
山に登ろうと思った理由、山から雲を見たかった。と言ったものの、実家も住宅街ではあるもののそこそこ標高のある土地にある。まぁ、雲を見たいと言う理由も嘘では無いが少し懐かしい様な感覚を持ちたかったと言う気持ちがおそらく大きくはあるのだろう。
「そう言えば、名前聞いてませんでしたね。名前。」
「あぁ、そう言えばそうですね。僕は、
「あれ? えぇと……もしかして、私と中学って同じだったりしません? 私、
「え⁉︎……」
中学? 川原景……確かに居た。中三の頃に同じクラスだったが、自分は同窓会に顔を出して無い上に地元の成人式にも行ってない為、中学の同級となんて殆ど会ってない。勿論、川原にだって会ってない。
「川原って、この川原?」
自分のスマホを取り出して“景”と言うLINEのアカウントを指差して見せる。すると、自分の目の前に居る川原は「やっぱり‼︎」と言いながら、自分のLINEのアカウントを見せて来た。
「……いやー、まさか旅の途中に中学の同級に会うなんて思っても見なかったよ。」
「そうだね、まさかね。」
旅で中学の同級に会うなんて、しかもそれを知らずに一緒に山に登っているとは。少しばかりか懐かしい様な気がしていたがその正体がまさか中学の同級だとは本当に思っても見なかった。そして、この時初めて世間ってものは狭いものだと深く感じた。
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