『結果発表』

『結果発表』




『——神聖三月しんせいみつきぎしくして、みないわ長期ちょうき祭日さいじつここに"終了しゅうりょう"と相成りました!』




 三ヶ月の集計期間終了。

 各チームより『∞印むげんじるしつつ』とは『期間中にどれだけ民のために奔走したか』を"感謝"や"感激"や、"その助力によって胸に湧いた安らかなる念"を"実体エネルギーに変換して数値とも表せるGABA"も『これまで』と主催に回収して集めた『信仰の計測結果』が——"殆ど怠業サボタージュを決め込んでくれた高位を含む大勢は論外"として『古き女神たち』に『ネオ・ニュー・知の三柱』などは早々に除名されての展開。




『そうして決まる"最優秀の柱たちえむ・ぶぃー・ぴー"! 【期間中に最もたみ信心しんじんき集めたのはだれか】として【真に現行世界げんこうせかいの"主役しゅやくになう者"も誰なのか】——』




「……」

「……」




かしましょう。残る候補は圧倒的成績を重ねて——"二組にチーム"!』




 即ち天面や水面の結果表示へ残るが順当じゅんとうに。

 スーパーパワーで大人気なく、余りある高性能を活かしては『本気で経世済民けいせいさいみんを果たしていた』のがおうども。

 "暗黒王者"は闇魔界の王たるアデスの率いて『ダーク・X・フォース』と。

 彼に彼女ら大神同盟の権威集中『ワールド・オーダー』 の二組は、ソルディナが競技の開始地点でもあった特設スタジアムより結果を喧伝けんでんする中にも『名を呼ばれた有力者たち』として各地で寡黙に以後の通達を待つ。




『片や目に見える形としても他の有力候補を退け、また活動の主軸に"食糧をはじめとした各種支援に配給から皆の安寧を守り"、"その静かな眠りに向かう穏やかな日常を支えた夜闇やあんの王"とは——"魔王アデス筆頭"の『未知ダーク・X・フォース』と!』




「……」




『"その食う幸せの立つ瀬を奪うかの勢い"は、地盤じばん海流かいりゅうに皆の胃袋いぶくろさえ土台どだいから作り変えての——謂わば"インフラ整備のインフレーション"! 凡ゆる基盤を改善して劇的にも"神の恩恵"を至極明快しごくめいかいに表したのが『現世界ワールド秩序オーダー』!』




「……」

「……」




『既に双方では、"多く足踏みした諸神しょしん"の追随ついずいを許さず』




 そうしても明示の場。

 スタジアム中央にもデカデカと浮かぶ電光ライトニング掲示板に表された『集計図グラフ』にて見えるだろう。





『なら果たして、"そのチームで抜きん出るかの結果"は————!』





 左右から伸びる、"残る二組で互いの積み重ねた実績"。

 横棒よこぼうとなって愈々いよいよは——『真中まなかで押しあうか』の"実に見事な拮抗きっこう"から。






『——"同率タイ"——』






 停止。

 それも"完全な五分五分イーブン"。







『よって"決着促進ブレーク"の——【決戦けっせん】だッ!』






「……ほう?」

「……致し方あるまいて」






『"二者にしゃ三者さんしゃ一騎討いっきうち"——【最も臣民を助けた者は誰か】、"名誉ある座をけて両チームの最終対決"が行われることになりました!』






 即ちにも『筆頭が誰かを見定めねばならぬから特殊ルールの決定戦』。

 開幕に息巻いていた最速の王では他のチームに差を付けるような振る舞いを積み重ねた今にも『各種の失点』に『余裕なし』などで堅実の青年らが世界秩序に並び——『同率の二組のみでゴールへの先着を競う決勝走破けっしょうそうはを行う』ことに。





「……こうしては【次の決戦に勝った方】が晴れて一度の限定的にも【他の大神に認められる形で初の執政権を手中に収める】訳だが」

「……」

「"当然に集計も行えば先の宣言も口へと出す前に知っていただろう其方そなた"で……果たして"の結果"もであったのか?」

「……"ギリギリ"だった。【何とか諸々もろもろで必要最低限の用意に届かせはした】が——」





 ————————————————





「……女神。まさか我々で『最速の神に並び立てる』とは」

「……"疑い"が、お有りに?」

「"信じ難い"ことではあります。彼の王ならば誰より速く、"誰より多くの試み"が在ったはず」

「……裏で私が諸事を片付けていたことは察しの通りで、しかし誓って暗躍の不正などは働いておりません」

「……」

「そんなことをすれば誠実に合わせる顔もなくなってしまいますので」

「……では、"相手にもこそ追い迫られる理由"の一端はあった——ともすれば、『決戦これこそ』が狙いだと?」

同率どうりつの理由は色々とあるようだが、それも何処までを"意図されたもの"か」

「……」

「若しくは『本当に手を抜かざるを得なかった』、剰え『遊びにかまける暇もないほど』とは、果たして一体どのような本務じじょうがありもすれば……"次なる鬩ぎ合いで自ずと明らかになるだろう"」





 諸用の済んだ脚ではテノチアトランの無人無菌の開かれた公園に停泊するトリケランダー。

 暗に仄めかされた薄暗い事情はさておき、実際にアデスらでは青年の進言も受けて『人で特に煩わしい』とされる『確定申告』なども面倒を手早くに終えられるよう『簡略化の極意ノウハウも提供』としていれば、『信仰獲得で大いに負けず劣らずの実績はあった』と現況を省みて『割と順当』の結果を受け止めての会話。




「……では、此の後で本当に?」

「"大神同士には残す余力も許されぬ"でしょうから」

「『わたし』と『とも』を含む"我々"で……"大神の二者へと挑む"?」

「"——"」

「……しかし、"今"では」

「……勿論は『辞退じたいの選択肢』も視野に、"我々三者"でも抜かりなく各位の意見を交わす」

「……はい」




 その恐竜を象った自機を背に並ぶ『女神の原型』たるアデスと美の女神イディアは、未だ心の整理が付かず離れた物陰に膝を抱える青年の分も"事態の理解"に今暫くは想像の時を割かん。





("自分で何かをする必要もない"のなら、もう……さえ——)





 ————————————————





「仮に『よーいドン』の一斉で同時にスタートしては超光ちょうこうを擁する我らが軽快に千切ちぎっていただろうが——いやいや、げんに『後発こうはつ不利ハンデ』あってもひかり鈍重どんじゅう暗黒やつより手掛けた事例の数多く」





 片やの既に終点のスタジアム周辺では『次の戦いに向けて充分に"ゆとり"ある場を確保しよう』と空間を広げたりのディオスと、足で踏み鳴らす地響きがそのまま振動で裂いた星の核よりプルームにプレートを湧き立たせて領土も拡大のガイリオス。




「その結果についても為政者いせいしゃは、『今後の参考のために』と民衆みんしゅう下々しもじもあいするたちからの"率直な意見"を集めた所——」

「……」

「『はたを頼んだのにいえごとむらの丸ごとを焼かれた』、そうして我らで建て直しともすれば『古い家のぬくもりが失われて〜云々うんぬん』に、『荷物の配達完了時間が早すぎる』——などなどの細かい不備が響き、減点を重ねてもおなあたいとなってしまった」




 結果発表で『"速き己ら"と"鈍足"が同値』と受けては賢さ極まる二者でも冷静な分析が並べ立てられる。




「それを『致し方ない』と」

もありなん。こうまで辛辣を言われると、『神の王者には"人の心"が、"力を持たぬ者"の分からぬのか?』と何度目かの自責じせきも悔しく沸き立つというもの」

「……」

「だがして、"それこそも大神"——『弱者の成り立つ経緯けいい』も"己の苦しい身の境遇"で痛いほどよくも知ってはいるが、『生まれながらに力を持たされた今では完全に同じにはなれぬ、仕方ないだろう』として次へ、次へ」




 無表情の王は『常に抱える"不完全の痛感"を再認するばかりでも今更で仕様がない』と流しての次第に声はようを取り繕う。




「また、それとして別の敗北スレスレに思い当たる理由——久方ひさかたの撮った自画像じがぞううるわしく、『自身を参考モデルにした模型フィギュアの作成に時間を割いていたこと』もたたったが、これに関しても"展示や発表に向けた明確な締め切りがない"と『もっと出来るはずだ』と延々に修正作業を繰り返してしまうのが造物主ぞうぶつしゅさがよ」

「そんなこともあったか」

ほかほかに咥えては『淫靡の罠エロトラップ』や『"ダーク落とし穴"を踏んで制限チョーカー付きの惑星帰還に手間取っていたこと』も結果に響いたが……"てよ"」

「……」

「つまりそれではこのまま負けたら『エロトラップ一つがなければ勝っていた』と……即ち『エロトラップによって敗北した王』の"恥ずかしき不名誉ふめいよ"をさずかってしまう?」

「……?」

「だっても仕方ないだろう。微笑ましくも愛する吾が子が『最高のエロトラップアトラクションを考案した』と意気揚々に解説を語り上げて言うのだから……まず以て其れが『危険でないか』を確かめて見るためには"健全にして頑丈の神の玉体"で力を貸してやらねば」

「……そうかもしれぬ」

「しかしてエロトラップにおちいり、剰え『色々を敗北した神々の王がいるらしい』とちまた噂話うわさばなしになってしまうのは……いや、こまるなぁ。実にこまるとも——フォッハッハッ」




 醜名しゅうめいの危機にひんしても笑う。

 それすら型に嵌まるのを嫌って前代未聞の自由を求める神にとっては『都合がいい』と空虚にあざけり、同時に力の絶えずみなぎっても輝きの止まぬ眼光は『常に奸物かんぶつにも在る己』こそを嘲笑うよう痛々しくもあり。





「はっはっは〜……ぁ"ぁ〜……別に巫山戯ふざけてばかりに手を抜いていた訳でもないんだが、大神とは真面目まじめ大真面目おおまびめにあって……されど細かく個を助く同格どうかくを相手に全期間から三分の一のハンデは大きかった」

「だが、我らで納得して勝つ為には必要な"準備期間ハンデ"でもあったろう?」

「そうだ、そうとも。"したたかにも行こう"。確かにハンデとして丸々一月まるまるひとつきをくれてやったのは大きかったが、"そのゆるりと出来た自由時間じゆうじかんで我らも多くの学びを得たのだ"」

「ああ……!」

沢山たくさんしきけたよ。それもあらたの」

「まだ『無事に完成』とはいかぬが」

「その"最後の大詰め"もこれから何とか徹夜で計算式。残る算数を反復練習ドリルで掘っても実用の領域へ突き進むぞ——引き上げるぞ」

「"危険リスクおかす覚悟"もできている。"偉大への挑戦"を前にしては、『とうに古惚ふるぼけた筈の心も不相応ふそうおうな夢を見られる』という"興奮"だ」

「おうとも。"暗黒あんこく無策むさくで挑んでは無言の纏う重圧ハイ・プレッシャーに押し潰されてしまい"のだけだから……"老いたる身でも勇猛果敢に挑んでは出来うる限りの慎重に"」





 されどは『大神』という"老いても益々健在の戦略家"。

 手練てだれの王で『好敵手ライバル』という"明快な乗り越えるべき障壁"を見据える眼差しが『未だ世界に夢見るわらべ』のようにも嬉々ききとして、明媚めいびな銀の燃える発色を見せるのだ。





「そうして決戦の差し迫っても"別な一計いっけいの実行"とする」


「先刻に吾が分け身の宣言通りに間もなくは——"未知の力"たる『ダーク・X・フォース』と、"現世界の秩序"そのものである我ら『ワールド・オーダー』で優秀の座を競うのだが」









「そう。『これから愈々もって本命同士で競り合おう』と言うのだが——"その前にも"」

「"やはり"はれの日。"解明の時"に相応しく」

懸念けねんを晴らしてしまおう。『ひそてき』が何であるか分からぬままでは力も発揮し難く、"只の降って湧いた少年少女の民草たみくさ"では……やりづらく」





「……」





たくわえても無限むげんの力を差し向けるべき——"真なる標的ひょうてき"は何処いずこか」


白日はくじつもとさらさん。『守るべき』か、『攻め落とすべきか』と払拭ふっしょくする——」













「『もっとあやしきは青年せいねんであって女神めがみ』の"なぞ"を——かさん」









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無限遠のハッピーエンド しばゆかり @shiba-yukari

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