東京都千代田区霞が関2丁目の話


 仲野の前の電話が鳴った。


 「はい、仲野です。はい。はい。わかりました」


 電話を切ると仲野は、鏡の前に立って身繕いを始めた。


 「出てきます」


 そう言って仲野は部屋を出て行った。


 神村は「仲野です」と電話に出たことと身繕いの時間の長さから推測して、(ああ、誰か上の人間に呼び出されたな)そう思った。




 「失礼します」


 「おお、来たか。ご苦労様、ご苦労様。君は席を外してくれ」


 「はい」




 「万事うまくいったようだね」


 「いえ。少々賑やかになってしまい、申し訳ございません」


 「構わん、構わん。岡田清の身柄も拘束出来たのだろう。それなら、向こうへの貸しとして、あれぐらい賑やかで丁度いい。しかし、あれだねぇ。素人三人で、切れ者と噂されているヤクザ相手に、よく考えたものだよ」


 「ええ」


 「木村……勇作といったかな?彼はこの先、何処かで使えるんじゃないのか?」


 「そうかもしれません。ですが、先ずは、キッチリと刑期を終えてもらわないと」


 「ハハハッ、まったく怖い男だ。誰を使うにしろ、君のような有能な参謀がいてのことだろうがね」


 「ご冗談を。私はただ少し、死んだ船本に助言をしただけです」


 「どうだ、これを機に戻ろうとは思わんのかね?」


 「そのお話は……」


 「フフフッ、まぁいい。これからも頼むよ」


 仲野は深々と一礼して部屋を出て行った。






             



                      fin


        

    ロング・ロング・ロング・ロード Ⅳ 道南の涙 編へ続く

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ロング・ロング・ロング・ロード Ⅲ 道北の蒼・道央の碧 編 神舞ひろし @davidson1200s

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