二話 独立

西暦2071年6月24日(水)


 「ただいま。」

 「あら、お帰りなさい涼ちゃん。」

 

 就職試験で門前払いを受けた僕は、家に帰った。ここは落ち着く。いいところだ。この場所では、僕は僕として、杞紗凪涼きさなぎりょうという一人の人間として扱ってもらえる。決して、ステータスの低いゴミなどではない。

 

 「どうしたのそんなに暗い顔して。何かあったの?」

 

 心配そうにこちらを見て、思わず「企業にね、面接に行ったんだけどね・・・。」と口を滑らせてしまいそうな表情を見せる僕の母親、杞紗凪香織きさなぎかおりは、ある企業の研究者としてがんの特効薬の研究をしている凄い人だ。ただ、給料は一般の賃金労働者と比べてもかなり低く、年収は100~110万程度である。

 

 「ううん。大丈夫。何にもないよ。」


 僕は心を痛めた。

 

 本来なら、14歳の僕が就職試験なんて受ける必要はない。14歳の子供たちは皆、中学校に行くからだ。実際、僕も13歳までは中学校に通っていた。だが、中学一年生を終えた次の日、


      僕の父さんは、何の前触れもなく、突然いなくなったのだ。


 僕の父さんは世界的にかなり有名な医者だった。それにかつては、神の贈り物ともいわれるほどの才能を持った科学者でもあった。だから父さんはとても格好良くて、僕は本当に父さんに憧れていた。いつか自分も、父さんみたいな医者になって人々を絶望から救いたいと思っていた時期もあった。


 なぜいなくなったのかは、僕も母さんも知らなかった。誘拐されたのか、拉致されたのか、事件に巻き込まれたのか、蒸発したのか、すでに死んでいるのか、まだ生きているのか、何もかも分からなかった。そして、今も僕たちは何も知らない。


 いなくなった日から数日後、母は僕に「大事な話がある。」と言った。それは、父さんの給料が振り込まれなくなったからお金がなく、中学に通わせてあげられないという話だった。

 中学には友人もいるので、悲しくなかったと言えば嘘になる。だが、現実を理解していた僕は、それを受け入れるしかなかった。


 こういう経緯で今に至る。就職試験の事は母さんには伝えていない。僕一人で何とか生きていくつもりだ。そして僕は、医者になることをまだあきらめてはいない。

 今はお金を稼いで、勉強して、大学に行くことが目標だ。でもいつかは、立派な医者に、昔の父さんのような医者になりたい。いや、なってみせる!

 僕は決意を固くした。


       言い訳をするものは、夢をかなえることなどできない


 杞紗凪きさなぎ りょう

攻撃力:38 防御力:49

素早さ:51 知力:81

運:22 

特技: ―

性格:夢見がち

職業:医者志望

 職業能力値

知力(生物):68 知力(化学):49

技術:83 慈善心:89

判断力:134 思考力:92

成長段階:発展途上



 


 

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