第6話

 電車の中で描いた似顔絵は、十分に効果を発揮している様であった。思わぬ才の発見に気分をよくしながら、次の店舗へと向かった。

 竹下通りで彼女へのプレゼントを探している体で、「こんな女の子なんですけど、何が合いますかね」などとうそぶくのだ。色々と軽いやつだと、「あ! アリスちゃんじゃないですか![#「!」は縦中横]」と情報を落とすのだ。

 いらっしゃいませ、と落ち着いた声色で挨拶をする店員を横目に、不審がられない様に適当に物を見る。結構高いんだな、とおそらく彼女が多く所持しているであろう品々を見て思う。バイトができる年齢か微妙なところだったが家が裕福だったりするのだろうか。

「何かお探しでしょうか」

「ええ、彼女にプレゼントを──」

 そう言いながら振り返った叡士郎は目を見開く。彼に声をかけたのは絹の様な白い髪に、淡い紫色の瞳をした人物だった。店員にしては少しシンプルな格好をした彼──あるいは彼女──を少し不思議がるも、叡士郎は例のように言葉を続けた。

 スマホを見せると、その人物は口を歪めた。

「この絵、アリスちゃんですねぇ」

 物腰柔らかな口調に、新たな情報を手に入れられる好機を期待する。もう何軒も巡ったのだ。いい加減そろそろ辿り着かせてくれ、少女に、食人鬼に、アリス《僕の運命》に。

 その思考は、「でもこの子」と発せられた言葉によって遮られる。

「彼氏がいるなんて聞いたことないなあ」

 ──まずい。知り合いだったか。逃げ出してしまおうと、後退り仕掛けると、パシリと腕を掴まれた。

「ちょっとお話ししようか」

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被食願望 成上 @Nai9

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