瑠璃の羽

田中目八

瑠璃の羽

 彼女は美しい瑠璃色の羽を持つてゐた。

 雄鴉達は挙つて彼女に恋をし求婚した。然し彼女は黙つた侭、どの雄からの求婚にも応じなかつた。  

 其でも雄達は諦めずに毎日求婚を続けた。美しい物、珍しい物、はたまた面白い物、雄達は彼女の気を惹かうと様様な貢物を探して来ては彼女の元に運んだが、やはり彼女は黙つたまま、どの貢物も受け取らなかつた。

 

 或時、一羽の雄が自慢の歌声で彼女の気を惹かうとカーと鳴いた。彼女はやはり黙つた侭だつたが、其を見てゐた他の雄達が、我こそはと競ひ合ふやうに鳴き出した。何十羽、何百羽という雄達がカー、カー、カー、と鳴く。

 すると、突然、其迄ずうつと黙つてゐた彼女が

「ガー!」

 と一声鳴いた。

 酷い濁声だつた。

 雄達は彼女の声の余りの醜さに驚いて一斉に逃げ出してしまつたが、唯一羽だけが残つた。


 ――やがて彼女は美しいラピスラズリの卵を二個産んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

瑠璃の羽 田中目八 @tamagozushi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ