第2話

山の中腹の洞窟を越えた所に森があって、その近くにゴブリンたちの集落があった。


そこには男に女、子供に大人、赤ん坊から老人まで色んなゴブリンがざっと100人程暮らしていた。


「すげえ……これ全部ゴブリンかいな……」


「何珍しがってんだ?お前もゴブリンなのに、変な奴だな。来い、ヤッソー。長老に会わせてやる」


そう言ったカイに連れられ、俺は集落の一番奥にある小屋に案内された。


途中、他のゴブリンたちが、俺を物珍しそうに見てきた。


「ここだ。ちょっと待ってろ」


言われて待っていると、しばらく奥で誰かと話していたカイが戻ってきた。


「いいぞ、来い」


言われてついていくと、そこにはヨボヨボで傍らに杖を置いた1人の男のゴブリンが椅子に座っていた。


えらい歳よりやなあ……90歳位か?…ゴブリンと人間の年齢を同じ様に考えてええんか知らんけど……。


「長老、この者がさっき話した者です」


「あ…どうも、えと…ヤッソーいいますぅ……」


「……」


「……」


俺が挨拶したのに、長老は何も言わない。


よく見ると目つきが鋭いなこのじいさん。


俺がどないなやつか吟味しとるんか……?


そう思うとちょっと緊張した。


そしてしばらくすると、長老は口を開いた。


「……………あ?なんだって?」


「……聞こえてなかったらしい」


「いや聞こえとらんかったんかいっ!」


耳遠っ!


「長老!この者が!さっき言った者です!」


カイは耳元で大声で言った。


「…ええっ?……さっきなんか言ったっけ?」


「言いました!」


耳どころか記憶力も悪いんじゃねえか!


「そんな事より儂の昼飯はまだか?」


「さっき食べたでしょう!」


「わしゃまだ食べとらへんぞ?」


「食べました!」


「食べとらへん」


おいいいいっ!去年死んだうちのじいちゃんみてえになっとるぞ!


「……ところでお前、誰やっけ?」


「カイですよカイ!子供の頃からこの集落にいるでしょ!」


「……おお、そうじゃったなカメよ……」


「カイです!そして昨日はカニって呼んでました!」


そんな感じの会話が5分以上も続いて、ようやく俺はこの集落に住む手筈となった。


……ああ、しんど……。

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転生したらゴブリンだった件 火田案山子 @CUDAKI

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