転生したらゴブリンだった件

火田案山子

第1話

トラックにはねられた。


異世界転送マシーンとも呼ばれているあの大型自動車に。


ちょっと…俺今から会社いかなあかへんのやけど…何でいきなりはねられとんの?


ああ……あかん…体の感覚無いわ……。


せめて死ぬ前にもう1回だけおかんの作ったからあげが食いたかったわ……。


うう…わが生涯に…結構な…悔いあり……がくっ…。





……で、目覚めたら俺はゴブリンになっとったわ……。


「……何やこれ?異世界転生ゆーやつかいな?」


俺も流石に知ってるで?


あれやろ?幼女になったりスライムになったりするやつやろ?


まさかそれを自分が体験する事になるとはなあ…。


「……つか何でよりによってゴブリンやねん…」


これじゃ転スラやのうて転ゴブやで…語呂わりいわ……。


背は低いし、体は何や…緑っぽいし、ボロボロの服着とるし…犬歯は長く鋭いし、頭には2本の小さい角生えとるし…つうか体臭くっさっ!俺くっさっ!


さてこれからどないしよ……と思ってたら、人が現れた。


1人の少年やった。簡素な服着てちゃちなナイフ持って、どう見ても駆け出しの冒険者やった。


「あ、ゴブリンだ!……ようし、まずはこいつ倒して経験値と金ゲットだ!」


そう言うと少年はナイフを振り上げ襲い掛かってきた。


「いやこわぁっ!ちょっ…こっちこんといてえやあっ!」


当然俺は必死で逃げた。


「やめんかいこぞおっ!俺を殺しても経験値なんて雀の涙やし、金なんて一銭も持ってへんでえ!」


俺は叫んだが、少年はなおも追いかけてくる。


「げへへ…!ゴブリンはみんなそう言うって酒場のおっさんたちが言ってたよ!でも初心者はまずは町の近くでゴブリンを狩って狩って狩りまくって少しずつ稼いで行って少しずつ装備を強化して行ってから次の町へ進むのがセオリーだって聞いたぜ!」


「そんなゲームのお約束を現実でやるんじゃねえ!狩られるゴブリンの気持ちも考えろ!雑魚敵は無限に出てくる様でも実はちゃんと1人1人生きてんやぞうわーん!」


はあ…!はあ…!……くそっ!この体やたら疲れやすいぞ……駄目だ……もう走れへん……。


「大丈夫……痛くしないから……ちょっとだけ……ほんの2刺し位で終わるから……」


「さらっと何言ってんだてめえ!そりゃそんなナイフでも2回も刺されりゃ死ぬわ!てめえにやったろか?ああっ!?」


もう駄目だ……。俺が諦めて足を止めかけたその時。


「おりゃあっ!」


突然、2人のゴブリンが現れて、少年に襲い掛かった。


「うわあっ!…3対1は卑怯だぞ!……く…くそうっ!覚えてやがれ!」


途端に少年は逃げ出した。


「大丈夫か?」


ゴブリンの1人が俺に手を差し伸べた。


「お…おう……おおきにな……」


俺はその手を取って立ち上がった。


「…ったく、こんな所にゴブリンが1人でいたら、初心者冒険者に狩ってくださいと言ってる様なもんだぞ…」


もう1人が言った。


「はあ…すんません…」


「これからは1人でウロチョロしたりしない事だな」


「ああ……気をつけるわ……」


「お前、見ない顔だな。どっから来た?」


「え?ええと……」


どう言えばええんや?


「まあいいさ…とにかく一緒に来い。俺たちの住処へ案内してやる」


「あ、どうも…」


「…ところで、お前名前は?俺はカイ。こいつはライ」


「あ、俺は康夫や。加藤康夫」


「カットヤッソー?変わった名前だな。じゃあついてきな、ヤッソー」


という訳で俺は2人のゴブリンについて行く事にした。


何や…ゴブリンって意外とええやつらやないかい。

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