一生消えることのない刻印

不可解な事件の「被害者」たちと、その腕に刻まれた「味わえ」の文字。いったい誰の手によるものか。
司法などあてにならないとばかりに私刑というものが横行する世の中ですが、そんな集団心理よりももっと直接的でラディカルな神の手による刻印。人間ではない神による私刑です。
味わえ。お前自身が。

再読ですが、その分「被害者」たちの味わった恐怖と苦しみが、間接的に真の被害者の姿と重なり、さらに濃くその業を感じさせました。
死ぬことを選べない者たちは、一生消えることのない刻印を押されたまま生き地獄を歩むのです。
罪と罰という題材を不条理劇というかたちで明瞭に表現してくれる秀作。

その他のおすすめレビュー

柊圭介さんの他のおすすめレビュー1,057