第7話 ラフ

 絵本のラフ画がメールで送られてきた。便利な時代だ。正雄はそれを印刷して、打ち合わせに行く。絵本は正雄を中心に複数人で作成に携わっている。馴染みの喫茶店で意見を交わす。

ストーリーの原稿は正雄の担当だ。ストーリーと絵が合っているかどうか、キャラクターデザインはどうか、喧々諤々の意見が交わされた。ノートにまとめて帰宅してから出版社にメール返信をした。今が至福のひと時、充実したクリエイティブな現在を満喫している。次回があるとすれば自分で絵を描きたいと衝動にかられたが、プロのイラストレーターが描くラフ画はやはりプロである。イラストレーター養成の大学や専門学校に行っていない正雄にはとてつもない大きな壁であった。まあストーリーだけでも校正し、結構形になった感じである。細部はまたみんなで考えてもいいだろう。年末の慌ただしい季節がやって来たのに、今年は実感がない。自由というのはいいものだ。好きなことが出来る。再度、絵本の原稿を見返しながら一人にやけた。

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レコーズ 富田 翔吾 @masayuki-shogo

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