懐古柔録

12

　本当にさぁ、あの時マジで焦ったんだよぉ？

　お前の部屋は契約解除されてるしぃ、それが急にって話だったしぃ……。

　電話かけても繋がらないし、音沙汰も無くてさぁ。

　繋がったときはマジで嬉しかったんだからなぁ？

　お前酔っ払うと僕が誰のことも見てないって言うけどさぁ、お前だって僕見てねえじゃんー。

　僕だって後先考えてるしぃ、お前の後先だって考えてたんだよぉー？

　やるなら徹底的にって言ってんだろぉー！

　あーはいはい、その節は本当に悪かったって。

　ていうか酔っ払う度にその話持ち出すの、そろそろやめません新雪くん？

　今でこそ思うけどさ、確かに出発前はこう…いきなり消える俺かっくいー！　てなってたからさ、何も言えないけど。

　二年ロンドン行って、俺だって丸くなっただろ？

　丸くなったっつーか、原型思い出したって感じだけど。

　だからこうして帰ってき……ああもう技かけるな！！

　飲酒柔道断固反対！！

　僕だってたいへんだったんだからなぁ！

　だからかえってきたときもうれしかったし、また泣いたんだからなぁ！

　仲のいい人いっぱいつくって、がんばって、一人できかくたてて……。

　もうふっかつしろこのやろー！！

　もう本当に頭上がらねえから、ありがとうごめんなさいありがとう新雪。

　つかどうしたの今日、いきなり夜電話かけて来て呑みたいとか言い出して。

　今日生放送の日だったじゃん。

　あ、ちなみにタイムシフト予約してあるから。

　お察しの通り、いきなり仕事入っちゃってさー。

　リアタイで見れねえ時はいつもだけど。

　どうしたよ、いつも穏やか常識人の新雪くん。

　………………。

　…………………………………。

　…寝落ちしやがった…。

　こいつ本当に酒弱いな…よく生きてこれたな…。

　酔うと記憶飛ぶわすぐ寝るわの癖に……まあ、そうだな。

「いつか絶対、お前の隣に、また行くよ」

【懐古柔録】　Fin.