概要
12歳の夜、線路を歩く
12歳、友達と長崎旅行を楽しんだ僕は、下関で財布を落としたことに気づく。そこから野宿をしながら、一人で帰ることにした…。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!とにかく文章の質が高い
言いたいことはレビューのタイトルに尽きます。技巧をこらした美文であるわけではなく、むしろかなりラフなスタイルで書かれていますが、そこがこの作品のキモかなと思います。
一読して単なる思い出話の叙述に費やされる文体は、小学生たちの現在と未来=大人にとっての過去と現在を自在に往還し、フィクショナルな想像力を忍び込ませます。
おそらく作者の方の実体験であるさまざまなエピソードは、時間と空間のひろがりに支えられて、読み手に――おそらく作者さん自身の体験をこえて――強烈なイメージを喚起させます。個人的なことをいえば、夜の線路の闇と光についてこれほど注意を傾けたのは、芥川龍之介の「トロッコ」以来のことです…続きを読む