「障害」と聞くと、まず何を思い浮かべるだろう。
障害を持った登場人物のストーリーを描こうとすると、大概は「かわいそう」を盾にとったありふれた美談におちついてしまう。
「障害を持っていても頑張っている」「障害があっても懸命に生きていける」そんなテンプレートに乗っかった物語を読むと、強制的な感動、「これに感動しない自分が悪人であるかのような錯覚」の反作用としての感動が自分の中に起きる。
しかし、この作品はそれを飄々と越えていった。
「色覚障害」で三色しか認識できない美術部の佐野誠と、偶然それと同じ世界を描いたひよりの初恋の話なのであるが、単に「三色しか使わない絵が素晴らしい」という結論に本作は至らない。
佐野誠が自分に見える世界を正直に描く自己表現としての芸術が評価される一方で、色覚障害用の眼鏡をかけて、世界のあまりの美しさに涙を流す誠の姿は、やはり世界が私達が見ている世界が美しいものであるという事を再認識させてくれる。
やはり、世界は美しい。そんな単純でそれゆえに気づきにくい事実を、この作品は伝えてくれた、と私は勝手に思っている。
これがデビュー作?勘弁してくれ……