魔王は暇なり その3


「着いたよ!」

「ここがキッチン…広いな…」

イメージ的には、ホテルの厨房な感じだな。

「こんなに広いと器具探すのめんどいなー…そうだ!あいつを―」

魔王はぶつぶつとなにかを呟いてからフッと息を吹き出した。すると、目の前がまばゆい光包まれた。思わず、俺は顔を伏せた。

「ねえ~。急に呼び出すとかありえんのですけど~。」

知らない声が聞こえ、顔を上げた俺の前にいたのは、

「……妖精?」

そう、妖精だ。…多分。

「うちは正真正銘の妖精や!なんや、そこのガキ。我が主とどんなかんけーなん!」

ガキと言われて心底ムカついた俺だったが、魔王が説明してくれた。

「この子はヴィラ。うちの使い魔?だよ。」

「んで、主。急に呼び出して、どうしたの?」

「いやー、器具探すのめんどくさくなっちゃってさー手伝って♡」

「何探せばいいの?」

「えっと…ボウル(直径24cm)2個と泡立て器、ゴムベラ、粉ふるい、お玉、フライパン、ヘラまたは箸、バットくらいで十分だと思うぞ?」

「なんで…」

あきらかに不満げな声を漏らすヴィラ。

「いーからいーから♡」

魔王にたしなめられて、しぶしぶ器具を探し始めた。

黙っていれば可愛いんだがな…

「おい、ガキ。何考えとる。ていうか、器具集めて何するつもりなん?」

「クレープを魔王が作りたいっていうかr「うちも食べたい!!」えっ?」

ヴィラの目が輝いた。こいつも食い意地張ってんなぁ

3人?でギャーギャー騒ぎながらキッチンの用意をしていると、ドアが開く音が微かにした。振り向いてみると…

「ただいま戻りましたけど…何しているんですか?(圧)」

両手に果物やら色々パンパンに入った紙袋を持って死んだ魚の目をしたサキュが周りに魔力を漂わせながら立っていた…怖っ

「い…いや〜?な、何もしてないよお⤴︎」

((魔王…誤魔化すの下手すぎだ…))

「はぁ…とりあえず、必要な物は買ってきましたよ。器具は見つかりましたか?」

「バッチリ☆ヴィラも手伝ってくれたし」

「ふっふーん☆うちもやればできるんだよー?」

((スッ…))

「なっ!なんで、真顔!ねぇ!サキュ!」

ドヤ顔の魔王、真顔の(というより、白い目で見てる)サキュ、そんなサキュの目線に気づいて、慌てふためくヴィラ。……カオスだ

「そ、それで?サキュはトッピングで何買ってきたんだ?」

「あっ…あぁ、魔王様に言われた苺と、私の好きなりんごなど」

「よっしゃあい!!」

「((スッ…))…ポンチェアータ様…あとは…任せました…」

サキュがめっちゃ疲れてる!!表情は変わらないけど!!

「わかったよ。サキュは休んでてくれ」

思ってることを顔に出さないように、平常を装ってそう言った。

ふらふらとキッチンから出ていくサキュを見送る。そして、振り返って二人に声をかける。

「おい、お前ら」

「「?」」

「クレープを作るぞ」

その一言に目を輝かせ、満面の笑みで二人は言った。

「おうよ!!」

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魔王さまの日常(仮) 琴乃葉 @km603065

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