最終話 大事な――

 物心ついた頃にはすでに真昼まひるよるは共にあって、それを疑問に感じる事は今まで一度もなかった。


 小学校に上がり、学校行事でどこかに泊まらなければならない事も幾度いくどか出てきたが、その辺りは夜の持ち前の明るさと人当たりの良さでなんとか誤魔化ごまかしてきた。

 だから、真昼のこの特殊な状況で困った事は、本当に最近まで全然なく、僕も真昼も夜も、そしてお互いの家族を含めて今までなんやかんや上手く折り合いを付けてやってきていた。


 そんな僕らに訪れた初めての問題が、今回のこれだった。


 仮に僕と真昼が両思いで、付き合い始めたとする。しかしその体にはもう一人の所有者がいて、彼女には彼女の人格があるわけだ。そうなった時、僕らは本当に付き合っている事になるのだろうか。


 真昼が表に出ている間、もちろん彼女は僕の恋人だ。だけど、夜が表に出ている間は? 夜を一個人として認めた場合、その間彼女は僕の恋人ではなく、ただの幼馴染おさななじみだ。

 となると、真昼が表に出ている七時から十九時まで彼女は僕の恋人で、夜が表に出ている十九時から六時まで彼女は僕の恋人でない事になる。


 ――とまぁ、色々と理由らしきものを並べてみたものの、結局僕は夜の事も好きで、二人ともに僕の事を好きでいて欲しいのだ。


 その話を二人にしたところ、「うん。いいんじゃない。私もそれが一番だと思う」という答えと、「よーは強欲たねー。ま、私もその判断に特に異論はないけど」という答えかそれぞれ返ってきた。


 というわけで、僕は同時に二人の女の子と付き合う事になった。


 僕には幼馴染みがいる。ポワポワしているけど、優しく可愛らしい彼女。僕には幼馴染みがいる。いつも直球、うるさいけれど、元気で明るい彼女。


 そのどちらの彼女も僕の大切な幼馴染みであり、僕の大事な恋人だ。

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黄昏時に見る君は みゅう @nashiro

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