第8話 引退

「みんな! 今までありがとう! 渋子は今日でアイドルを引退します!」

 渋子の引退ステージが行われる。

「妹が病気なので、田舎の富士山に帰って看病します!」

 渋子の妹はピヨコ。渋子の引退理由にファンは「優しい。病気の妹を看病するなんて。」と喜ぶのであった。

「渋子ちゃん! 短い間だったけど! 今までありがとう!」

 ちなみに渋子の上京からアイドルになって引退するまでの期間は、たったの一週間であった。

「みんな! ありがとう!」

 こうして渋子の引退ステージは終わった。

「いいかい。渋子ちゃん、今までのことは全て内緒だよ。もしも芸能界の裏の顔を喋ったら、命はないからね。デビュー前のエッチな動画も全て消去してるから、静かに暮らしてね。」

「はい。私は何もしてませんし、何も見てませんから、何も言いません。実はアイドルが政治家やテレビ局、スポンサーに広告代理店の人に韓国みたいに性の接待をやりまくっているなんて言いません。」

「じゃあ、ここにハンコを押してね。」

 渋子は芸能プロデューサーと話し合い、芸能界の裏の顔は話さないと念書にハンコを押す。

「私は! 自由だ!」

 アイドルを引退した渋子は自由になった。

「よし! 妹の元に戻ろう!」

 渋子は東京駅から新幹線に乗り、故郷を目指す。

「あ! 富士山だ! 富士山だ! ああ~私は帰ってきたのね! 故郷に!」

 近づいてくる富士山の車窓からの景色に渋子の心は高鳴った。

「ああ~! 富士山だわ! 私の富士山!」

 新幹線を降りた渋子は歩いて富士山の実家に向かって行く。

「ピヨコー! ピヨコー! ただいま!」

 渋子は実家にたどり着いて妹を探す。

「おかえりお姉ちゃん。うるさいから静かにして。」

 妹のピヨコである。

「ピヨコ! 会いたかったよ! 久々の再会なんだから喜んでよ!」

 はしゃぎまくる渋子。

「お姉ちゃん、アイドルにはなれたの?」

「なれたわよ! アイドル!」

「え!? どうやってアイドルになれるのよ?」

「なれたものはなれたのよ! アイドルに!」

「私たち、幽霊なのに。」

 渋子の実家は富士の樹海にある。

 終わり。

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渋子のアイドル物語 渋谷かな @yahoogle

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