第7話 アイドルの現実
「ええー!? 田前さんが引退!?」
渋子は第一報に驚いた。自分のいる人気トップアイドルグループ、PTA48のセンターを務める田前が引退することに驚いた。
「原因はこれよ。」
「こ、これは!?」
渡されたのは週刊誌のチューズデー。記事の内容は田前がダンスの先生と歌の先生と二股交際をしていたというものであった。
「そ、そんな!? じゃあ!? レッスン中に田前さんがいなかったのって!?」
「そういうことよ。トレーニングの先生方に体を売って、田前はセンターを守っていたのよ。」
「ガーン!? 私、田前さんみたいな完璧なアイドルになりたいと思っていたのに!?」
私の憧れていたアイドル像が崩れ去る。
「ええー!? アイドルなのファンを食べちゃったんですか!?」
「そうなの。原指さんが福岡に島流しになるそうよ。」
「原指さんって、そんなにきれいな顔じゃないのに!?」
「驚くのはそっちなのね。」
少し呆れられる田舎者の私。
「それだけじゃないわ。岸峰さんもファンを食べちゃって、丸坊主の刑になったのよ。」
「ま、丸坊主!? それはそれで、可愛いかも。キラーン。」
アイドルは恋愛禁止なのに、アイドルは処女でなく、普通の性欲のある女の子であった。アイドルの恋は愛し愛される恋愛というよりは、ストレス発散で男は誰でも良い感じだった。
「テレビや雑誌では煌びやかに見えても、結局、私たちアイドルは汚れているのよ。絶対にデビューする前に芸能事務所の汚いオッサンの相手をしないとデビューできないんだから。」
「ああ~アイドルになることを夢見ていたのに、アイドルになれたら、ただの売春婦だったなんて、がっかりだわ。」
渋子はアイドルの裏の顔を知って、ゲッソリした。
「私、引退しようかな。富士山に帰りたいな~。」
渋子のアイドルになりたいという夢は叶ったが、達成感は過ぎ、ただただ故郷に帰りたいという哀愁が漂っていた。
「そうね。人気が出る前に引退した方が正解ね。トップアイドルでスキャンダルを起こした田前さんは、ヌード写真集や、AV女優とか裸で商売する仕事しか、芸能界で生き残る道はないそうよ。」
「うわあ!? 最低!?」
引退するか、服を脱ぐか。それが芸能界の現実であった。
「アイドルって、詐欺師ね。ああ~!? どうして私はアイドルなんかに憧れたんだろう!? 私の時間を返せ!? 私の純情を返せ!?」
アイドルに飛びついた若さ故の過ちだった。
つづく。
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