002:虹色のUR、金色のSR、忘れられない夜。


『虹、銀、銀、銀、白、白、金、銀、銀、銀』


 ガチャから次々と出てくるカプセルはこんな順番で並んでいった。

 どう見ても虹色は大当たりだ。

 思わず声を上げて喜びそうになった。

 こんな意味の分からないガチャに。

 当たりって、なんでも嬉しいもんだな。

 

 次に当たりなのが金色か?

 順当にいけばそうだろうな。

 それで銀がレアで白がハズレってところか。


 カプセルは開くことなく並んでいる。

 次の工程に行くには俺がタップしなくてはならないようだ。


「ドキドキするな……」


 心臓の鼓動が相変わらず早い。

 

 すー、はー。


 すー、はー。


 大きく深呼吸して、俺は震えながら画面にタップした。

 

 するとパカッ、パカッ、と次々にカプセルが開いていき───スキルの名称とレア度が表示されていった。



 ++++++++++


 

・テレポート:Lv.1【UR】


・身体強化:Lv.1【R】


・打撃耐性:Lv.1【R】


・斬撃耐性:Lv.1【R】


・煽り耐性:Lv.1【C】


・煽り耐性:Lv.1【C】


・豊魔:Lv.1【SR】


・HP強化:Lv.1【R】


・HP強化:Lv.1【R】


・気配遮断:Lv.1【R】



 ++++++++++


 

 《スキル〈煽り耐性:Lv.1〉が統合され、〈煽り耐性:Lv.2〉になりました》


 《スキル〈HP強化:Lv.1〉が統合され、〈HP強化:Lv.2〉になりました》


 …………。


 …………。

 

 …………。


 困惑する俺を、さらに困惑させる通知が画面に表示される。


「煽り耐性って……それに結構かぶってんな……。いや、あーうん、そうじゃなくて……」


 うん、煽り耐性はどうでもいい。


 なんだこれは。


 え?


 これだけ?


 これで終わり?


 ちょっと拍子抜けなんだけど。


 スキルって……いや待てよ。


 俺は『ステータス』という項目をタップした。



 ++++++++++



 名前:タナカ キヨノブ

 種族:人間

 HP:46/46

 MP:114/114

 【スキル】

〈テレポート:Lv.1〉〈身体強化:Lv.1〉〈打撃耐性:Lv.1〉〈斬撃耐性:Lv.1〉〈煽り耐性:Lv.2〉〈豊魔:Lv.1〉〈HP強化:Lv.2〉〈気配遮断:Lv.1〉

 


 ++++++++++



 …………。



「……なんだかなー」


 これはなんだ?

 課金額がこんなに化け物じみてるのに、ステータスがなんだか味気ない。


 もっとこう……他にこう……いい感じのステータス作れなかった?


 結局スキルの説明もないし。


 テレポートがURらしいけど……たいして嬉しくもないわ。

 何に使うんじゃい。


 え、これってあれ?


 ただガチャを引いて、ステータスをスキルで充実させていくだけのマゾゲー?


 ワロター。


「はぁー、緊張して損したー」


 俺はスマホから目を離し、天井を仰いだ。


「アンインストール決定だな」


 疲れた。


 心が疲れた。

 

 無駄にドキドキしたわ。


 めちゃくちゃ裏切られた……。


 なんだよこれマジで。


 おすすめにでてきたってことは、今の若者の間ではこんなのが流行ってんのか?


 理解できんわ。


 とりあえずベッドに戻ってダラダラし直すか。


 そう思い立ち上がり───俺はそういえばと思い出した。


 これはただの悪ふざけだった。


 深夜で孤独でテンションがおかしかった。


「ベッドへ〈テレポート〉ッ! なんつっ───」


 ───視界が切り替わる。


 俺はベッドの上に立っていた。

 

 何ひとつ理解出来なかった。


 テーブルの近くに居たのに、気づいたらベッドの上に立っていた。


 中年になり衰えた俺の心臓がこの時止まらなかったことを、盛大に褒めてやりたい。


 

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