004:テレポート実験と意外な発見。
「無くなってる……」
俺はコンビニで買ったカレーマンを食べながら『Ap〇Store』を確認してみた。
するとどうだろう。
スキルガチャなんてアプリは綺麗さっぱなくなっていた。
だが、これは夢じゃない。
だって俺のスマホには───
「やっぱあるんだよなぁ」
『スキルガチャ』のアイコンがある。
一瞬だけ販売されたのか?
んー、確かに音楽を無料でダウンロードできる某アプリとかはいつの間にか無くなってたりするけど……これもそういう感じなのか?
いやまあ、なんにせよ。
これだけは頭に入れておかないといけないだろうな。
「俺だけじゃないかもしれないってことか……」
『スキルガチャ』というヤバすぎるアプリを持っているのは、俺だけじゃないかもしれない。
あの瞬間、俺みたいに運良く『スキルガチャ』をダウンロードできた奴が他にもいるかもしれない。
なんだか怖くなってきた……。
俺は気づかないうちに、得体の知れない何かに巻き込まれたのではないだろうか。
それは考えすぎか?
確かに……ちょっと、いや、めちゃくちゃ興奮する。
すっごいテンション上がるよ、そりゃあ。
こんなとんでもない能力を手に入れられたら、平凡な俺が少年漫画の主人公にでもなった気分だ。
だけど……面倒事に巻き込まれるのはごめんなんだよなぁ……。
この能力を使ってコソコソとちょっと裕福に生きるくらいがちょうどいい。
「バレないようにしないとな」
そのためには、『スキルガチャ』のことは誰にもバレないようにしなくちゃいけない。
それだけは絶対だ。
俺は固く胸に誓った。
++++++++++
「いるかなぁーアイツ。いつもならいるんだが」
俺は今、近所の公園に来ている。
それはとあることを確かめるためだ。
実はさっきまで俺はこの〈テレポート〉についていろいろ実験をしていた。
やっぱこの能力に関しては調べておいた方がいい気がしたから。
いざという時のためにも。
一つ気になってたのが、〈テレポート〉で物体だけを別の場所に飛ばすことはできるのかということだ。
俺自身はテレポートで別の場所に行ける。
身につけてる物なんかも一緒に。
じゃあ、物だけを移動させることはできるのか? と思ったわけよ。
結果から言うと、普通にできた。
物体だけを別の場所にテレポートさせることは出来た。
これは結構凄いことだと思う。
いろいろ試してみて、重さによって“キツさ”が違うこともわかった。
まあ、冷蔵庫ぐらい重くても違和感程度のキツさしかなかったけど。
この点に関しては今後また検討していこう。
それで俺は次の実験をしたくなった。
内容は───自分以外の“生物”も物と同様にテレポートできるのか? ということ。
というわけで公園に来てみた。
なぜならこの公園には……
「にゃー」
「お、やっぱいたか」
猫だ。
真っ黒な猫。
なんか鈴のついた首輪してるんだけど、コイツの飼い主がいるかは不明。
だから俺は勝手にコイツを野良猫だと思ってる。
いつも公園にいるし。
「にゃー」
俺はよく夜に目覚めて散歩したりする。
その流れでこの公園にも来るもんだから、なんか懐かれてしまった。
だから猫は無防備にも俺に近づいてくる。
「悪いな、今日はちょっと実験に付き合ってくれ」
「にゃー」
俺の足に擦り寄ってくる。
やっぱコイツ飼い猫かもな。
人に慣れすぎてる。
「じゃあ、やるぞ」
猫を〈テレポート〉できるか試してみる。
周りに人は……いないな。
ちょっとだけ良心が痛むが、害はない……と思う。
いや、迷うな。
大丈夫。
俺はしゃがんで、自分の足に擦り寄ってくる黒猫の頭を優しく撫でる。
そして───
「───〈テレポート〉」
「ニャッ!!」
……できた。
やっぱできるのか。
まあ、予想通りってところか。
猫は1m先に移動させただけだけど、すごくビックリしてる。
悪いことしたな。
でも少し可愛いわ。
「……ん? これは……」
俺が〈テレポート〉の能力に感心していると、足元に何かが落ちていることに気づいた。
これは───首輪だ。
鈴の付いた……さっきまで猫がつけてた首輪。
……これはどういうことだ。
…………。
もしかして……物と生物を同時にテレポートさせることは……できないということか?
いや、いろいろ試してみよう。
それからも俺は実験を続けた。
そして分かった。
俺自身と一緒なら問題なく何でも一緒にテレポートできるが、俺以外の生き物や物質だけをテレポートさせるなら、同時に移動させられるのは一つだけということを。
「凄い……」
これは些細な違いだが割と重要なことだと思う。
だって……俺はこの事実からとんだ悪ふざけを思いついている。
例えば、俺が人間に触れてテレポートさせれば───
「───そいつは『全裸』でどこかに飛ばされることになる……ということか」
これは……ちょっと面白そうとか思ってしまったがよくよく考えたらだいぶヤバい。
他人を社会的に殺すことが簡単にできてしまう。
いや、さすがにこんなことは───
「おじさん〜こんな時間に何やってんの?」
その時、後ろから声が聴こえた。
心臓がビクッと跳ね上がった。
俺は恐る恐る振り返る。
そこに居たのは、大柄で金髪のいかにもチンピラという見た目の男だった。
───背筋が凍った。
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