500円から始まる沼

 自作に「魔王子レッドは名探偵になりたい」(https://kakuyomu.jp/works/16816927862172679354

 という魔界を舞台にしたミステリー作品があるのですが、これが全く読まれませんでした。

 一章はともかく二章は0PVが続いたのです。


 私はカクヨムさんが好きです。

 サイトも水色でキレイだし、読みやすく、応援しやすく、作品を見つけやすく、小説を書きやすい。

 ですが、この【PVを強制的に見せつけてくる】仕様はキツイなと感じています。


 連載作品が毎日0PVを記録する辛さを、運営さんはお分かりにならないのでしょう。

 誰にも楽しみにしてもらえない苦しみ。

 絵でダメだったのに、小説でもダメなら私に何が残るの?


 メンタルが絶不調になりました。

 子供に対してキレる。泣く。引きこもる。

 ソファにうなだれて家の事を全く出来なくなる。5キロ太る。友達のラインをブロックしまくる……。私なんか消えた方がいいんでしょと叫ぶ、など。



 おねがい、だれか読んで。面白いって言って!

 たすけて!!



 そんなある日、コ☆コ☆ナ☆ラ(検索避け)というアプリに出会いました。

 こちらでは様々な自営業者が集まっていて、編集さんやプロ作家、コンテスト受賞者など様々な方が感想を販売しています。最安値は500円で自作小説の感想を書いて貰えるのです。


「友達に高いコーヒーを奢って感想を貰うようなものじゃん。フツーフツー」


 簡単な気持ちで沼に足を踏み入れました。

 感想屋さんはものすごく優しかった。何度も繰り返し読んでくれたのが分かる丁寧な感想。

 あの場面が良かった。このキャラが好き。伏線が良い。意外な展開にビックリした。アニメ化できる。ファンになった。


「あなたの作品をもっと読みたい」


 魔法の言葉に、リアルでガチ泣きしました。

 同じ感想屋さんに、他の作品も沢山送り付けました。文字数が増えれば料金も増えるし、チップ制度もあるので、毎回の支払いが2000円、3000円となっていきました。

 別の感想屋さんにも手を出しました。自キャラのフルカラーイラストを描いてくださる方もいました。

 どんどん深みにハマって、どんどんお金を使いました。


 自作を褒められるのが、幸せでたまりませんでした。まるで天国のようでした。



 そんなある日、とある作家仲間さんが魔王子レッドに感想をくださりました。

 それを見て、息が止まるかと思いました。


「この事件は、魔剣の復讐なんですね」


 正式には少し違う言い回しですが、内容としてはこうです。

 そして、これは、感想屋さんの誰一人として気づかなかったポイントだったのです。

 プロが「褒めるぞ」と意気込んで読んでも見つからなかった、隠された黒幕の動機を言い当てて頂き、何かがバリンと割れた音がしました。


「読んで頂く」って、こういう事なんだ……。


 我に返った私は、感想屋さんに貢いだ総額を計算して出してみました。


 5万5000円です。


 椅子からひっくり返るかと思いました。

 ま、マジか。

 クレジットカード払いだったので私の独身時代の貯金から出ていたのでまだ良かった。

 離婚問題に発展しなくて済みました。


 感想を頂けるのはとても嬉しいものです。

 それがお金を払ったものであっても、思い詰めていた当時の私には救いでした。

 プロの仕事をしてくれた感想屋さんにはとても感謝しています。


 でもこれからは、頼らずに済むようにしていきます。

 作品の魅力を上げて、作家仲間さんとも交流して、自主企画などにも取り組んでいきたい。

 そして何より、PV数を気にしない!

 自分が最高に良いと思える作品を作る事に力を尽くしていきたいと思います。


 読んでくださり、ありがとうございました。

 ご質問などございましたら、分かる範囲でお答えしますね。

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感想が欲しすぎて5万課金した話 秋雨千尋 @akisamechihiro

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