第3話魔法デビュー

「で、これからどうする?」

俺はこれからのことを考えるためこの少女サンに質問する。

「おー。使い魔君やる気だね!やっと飲み込んでくれた!」

サンは俺が前向きになったのがそんなに嬉しかったのかニコニコしている。そんなに俺ってやる気ない感じだった?心外だなぁ・・・

「使い魔君!まずこれをあるところに届けに行かないとダメなんだ。」

そういうとサンは掛けていたカバンからくるくる巻かれた紙を取り出した。なんか宝の地図みたいだな・・・・。

「これはね!国の超超超ー秘密な計画なんだ!これが完成すれば魔法を使わなくても良くなる。」

「どれどれ・・・・」

「あっちょっと!使い魔君!ダメだよ。君でも!」

サンは必死に取り返そうとしているがそんな取られそうな出し方するから・・・・。その紙を開くと、中は何かの設計図のようだった。

「これって、飛行機か・・・・」

「ヒコウキ?これは、鳥みたいに飛べる機械。名付けて鳥飛機ちょうひき さ!そんな酷い名前じゃないさ!」

酷いって・・・・どっちもどっちじゃねえか。でもなんとなくわかった。飛行機を作って科学を進歩させようってわけか。でも、

「魔法じゃダメなのか?」

この設計図には魔法で動いたりなどとは書かれていない。魔法を使えばもっと凄いのが作れると思うのになぜ。

「まあ難しいのは君には無理そうだから端折るけど、魔法使うとあるものが溜まって、そうすると世界が寒くなる。」

なるほど。なんか地球の温暖化みたいだな。こっちは寒冷化かな?やっぱどこでもエネルギーは大切なんだな、色々と。

「分かったけど・・・・目的地までどれくらいかかる?」

「6日くらいかな?」

「食料は?」

「痛いとこ突いてくるね・・・・獲るかな」

まじかよ。狩りかよ。

「お金は?」

「 100ナイトくらいかな・・・・」

やばい。分かんない。

「りんご一個何ナイトくらい?」

「りんご?10くらいかな」

多分10ナイト100円ちょっとくらいか。1000円しかないじゃん。

「狩りか・・・・俺出来ないけど。」

「大丈夫だよ・・・・。・・・・そうだ!使い魔君が魔法使えるようにしよう!」

「そんな簡単に出来るの?」

俺はちょっと期待を抱きサンを見つめる。

サンはうーんと考えて無理やり作ったような笑顔でこちらに向き直し

「だ、大丈夫。普通の人は何かしら出来るし。少しコツいるけど。・・・・それと君使い魔として召喚されたしそれくらいね!」

「本当のこと言ってくれ。」

「まあ半分くらいの人はある。結構練習必要。・・・でも、魔法使えるかは今分かる。」

へー。もっといると思ってた。

「使い魔君。ちょっと背中見せて」

俺は言われるがまま背中をサンに向ける。するとサンは俺の服の下に手を入れ直に触れて来る。柔らかい手の暖かさが直にに来て凄いドキッっとする。

「じっとしててね。精霊よ。答えよ。スペル。真実。」

サンは俺の肌から手を離す。

「使い魔君。・・・・君魔法使えるみたいだけど結構不思議だね。ちょっと扱いづらいかも」

「俺なんの魔法だった?」

あると聞いたら気になって仕方ない。

「雷?多分。」

「多分ってなんだよ。」

「 雷なんだけど、なんか弱いっていうかなんか違う感じ?」

「なんだよそれ」

雷か。なんかカッコいいな!


「 ほら、もっとこう力を入れて。」

俺はサンの魔法で食料を手に入れて食べた後魔法の指導を受けていた。基本の構えから気持ちまで。だが使える気配がしない。まだ魔法陣すら出せない。出せたら魔法を出すだけなのに・・・・。サンは魔法を使うと少しの間動けなくなるらしい。魔法の反動が大きいのだろう。

「今日はこれくらいにしとこうか、使い魔君。」

「分かった。」


「よし寝ようか。君はそこね。」

「魔法って普通どれくらいで使えるように?」

「 2、3日で適当に出すまでは。上手く使えるのは数年だね。」

道のりは長いな。数年この世界に入れば魔法を操れるのか・・・・別に現実に帰りたいとは思わない。もともと死ぬ気だったから。でも死んでない保証ないんだよな。ここが天国説もある。

「そういえば、使い魔君のその首のは何?」

サンは俺の首にかけているものを指差す。

「これは・・・・大切な人からの贈り物だよ。」

「そうか。・・・・なんかごめんね使い魔君。帰りたいよね。王国に着いたら帰れるようにするから。」

「いや。もうその人はいないから大丈夫。」

サンはそれを聞き、ますます申し訳なさそうにして

「ごめん。悪いこと聞いたね。」

「いや、大丈夫。・・・・そういえばこの懐中時計見たなものってあるの?」

俺は首につけていた時計をサンに渡す。サンはとても優しく受け取り優しく時計を観察する。

「・・・・すごい。こんな精密な機械があるなんて・・・・。いや、大きな塔はあるけどこんな小さなものは無いよ。本当に君は不思議だね。」

なんで俺が褒められてるんだろう。でもまあいいか。

「よかったら・・・・」ギャオーー!

俺が話そうとした途端、森の中から遠吠えが聞こえる。

「な、なんだ!」

「魔物だ。使い魔君、静かに。」

しかし、魔物の声や足音は聞こえてくる。

「使い魔君。もし来たら私が戦うから君は隠れてて!」

「でも、」

「君は戦えないだろ?」

ギャオー!見つかってしまった。暗闇で赤く光る目らしきものはとてもおぞましく足がすくむ。サンは魔法を打つ体制に入る。

「行けーー!」

魔物に向けて放った氷は魔物の赤い目を貫き魔物は悲鳴をあげている。魔物は少しして声をあげなくなった。きっと死んだのだろう。すると、魔物の横から魔物が飛び出して、サンを襲おうとしている。しかし、サンは動けない。サンは魔法を使うと少しの間動けないのだ。だから俺を召喚して敵を追い払おうとした。

「サン!逃げろ!」

俺の声で魔物の存在にサンは気付くが動くことが出来ない。俺は飛び出そうとする。「君は戦えないだろ?」サンの言葉が頭をよぎる。分かっている。でも、動かないと後悔する気がした。いや、後悔するだろう。もう昔のように動けず後悔したくない。「葉月」のようにはなって欲しくない。あのそっくりな顔。俺は、助けたい。もう2度とあんな顔をあの顔にはして欲しくないんだ。

俺は教わったばかりの魔法を打つ動作をする。分かっている。使えないのは。でももしかしたら、助けれるかも知れないから。

「行けーーー!」

俺は全神経を集中させる。やばい。動作を飛ばしてしまった。でもやり直す暇はない。俺は魔物に向かって思いっきり魔法を放つ!・・・・つもりだったが俺の身体が内側から破裂するように痛い。ここに来た時よりも痛かった。その瞬間。俺の身体から大量の電気が放出された。それは俺たちの寝床全域に届いたようで、跳ね返ってきたであろうものも俺にもあたる。痛い。サンにも当たっているだろう。魔物は恐れをなしたのか逃げて行ってしまった。

「やった・・・・」

俺は薄れゆく意識の中彼女を思い浮かべた。


「ん、、、いてててて。」

俺はどうやら気絶していたらしい。身体中が痛い。魔法陣を開き忘れたから暴発したのだろうか。にしても、洞窟ってこんなに柔らかくて暖かいっけ。洞窟には光が入って来ている。きっと明け方なのだろう。

「ん・・・・」

え?俺は天井の方を見るとすぐ近くに可愛らしい顔があった。

「は!?」

俺はどうやら膝枕されているらしい。だから暖かいのか。でもよかった。助かったんだな。

「ん・・・・あ!やっと起きた?まったく、魔法陣を展開しないんなんて死ぬ気?」

「いや、その、必死で・・・・。悪かった。」

「いや、こっちこそ。助けられたから、その・・・・」

サンは恥ずかしそうに顔を赤らめながらも真っ直ぐ俺を見て、

「ありがとう。裕也君。」

ああ。俺は同じ過ちを繰り返さなくて済んだ。この笑顔を守ることが出来た。

サンのこの笑顔は、俺の中の「サンの笑顔ランキング」堂々第1位の最っ高の笑顔だった。

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使い魔は主人のために ゆーたです @yuutatata

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