余談

「榎本さんって大学生……だよね」

「文学部一回生。色葉でいいよ」

「……」

「どうしたの」

「あ、いや、まあそうだよな」

「そうって?」

「まあ、見た目相応だなって」

「律は二回生。外見の方が老けてるね」

「浪人生なもんで。……って、り、りつ?」

「……嫌?」

「嫌ではないけど、せめてさん付けをだな」

「泥酔して家の前で熟睡して挙げ句の果てに知らない女の子に介抱させた人に、敬語なんていらない」

「……」

「お肉、食べていいよ」

「……あのさ、知らない男に合鍵を渡して危険だとは思わなかったのか」

「思う」

「じゃあなんでこんなことしたんだ?」

「……ふぐ、食べたことある?」

「ないけど」

「ふぐ、おいしいよ」

「……」

「……」

「説明終わり?」

「うん」

「……おれ、ふぐだったの?」

「たとえのお話」

「……」

「律、お湯沸かしてきてよ。出汁が少ない」

「……」

「ねえ律、お湯沸かしてきて」

「……どこにあるの」

「うんとね。右の方」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

落とした鍵 香(きょう) @kyo-sha24

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ