第65話・Another story 2

 これは、まだ俺が高校3年の時だ。俺はそのままプロに行くから受験勉強など必要はなく、凛花にも受験勉強などほぼ必要なしであったため、夏休みはこうしてソファでイチャつくしかない。


いやぁマジ最高っすわ。


「ねぇねぇ恭弥、肝試し行ってみない?」

「肝試しぃ?」


 凛花から唐突にそんな提案をされる。


「そ、いつまでも家でイチャイチャしてても恭弥もつまんないでしょ?」

「つまんないわけねぇだろ。凛花と一緒にいてつまんないと感じた時はない」

「っくっ…それを言われると…ホント顔が赤くなるから辞めて。と、とにかく!! そろそろ夏だから心霊スポットとかで肝試ししようって言ってるの!」


 真っ赤に染まった顔でそんなこと言っても可愛いだけだ。でもそれにしても…肝試しねぇ。


「肝試しかぁ…やってみるか。何気に俺そういうの初めてだし」

「よし、そうこなくっちゃ…!」


 恐らくは何か企んでいるんであろう凛花。バレバレなところも可愛いぜ。


………

……


凛花side


「き、きききき恭弥!! 絶対に離さないでよね!? 分かってる!?」

「はいはい。ご安心くだされ」


 あぁぁああもうっ! なんでこうなるのよぉぉおおお!! 折角恭弥をビビらせて私に抱きついてくる様にしたかったのに…!!

 私が怖がってたらダメじゃない!!


 というか、なんで恭弥はこんな平気そうな顔をしてるのか疑問なんだけど。都内でもNo. 1の心霊スポットってネットでも書いていたところなのに…。


「恭弥は平気なの?」

「今んとこ平気だ」


 恭弥って…こういうの意外と平気な人だったのね…。不覚だったわ。


「あ…あそこよ。あの神社」


 夜になると一層怖さを増す少し古びた神社。私達はその鳥居の前まで来ていた。

 正直かなり怖いけど、恭弥をギャフンと言わせるためには多少のリスクを背負わなければならない。

 さぁ行くのよ工藤凛花!!


「待て凛花」

「え…?」


 鳥居の向こうに行こうとする私の手を掴む。


「この先は行かん方が良い。引き返そ」

「な、なんで? ここまで来たのよ?」


 むしろ今までのは前座、これからが本番だというのに、と思っていると、恭弥は私に耳打ちする。


「あー…うーんっと…なんといいますか…


神社の前の階段で女が手ぇ振ってる。それでも行くか?」


………

……


恭弥side


「むむむむぅ…むぅ…! むぅ…!」

「あて、あてててて…」


 家に帰ってきた凛花と俺は、簡単なお祓いをした後、風呂に入って寝る準備をしていた。

 が、凛花の機嫌が直らずに俺にずっと抱きついたまま胸に頭突きをしていた。


「ほんとに…いたの?」

「居ましたよ」


 俺の爺ちゃんの名にかけてそういう類の嘘は絶対に言わない。つかそんな嘘言ったらぶっ殺されるわ。


「恭弥」

「はい、なんでございましょう」

「今日はこのまま寝なさい」

「了解であります」


 最高の抱き枕を得た俺は、早速電気を消してベッドに横たわり、今も拗ねている凛花の頭をヨシヨシと撫でる。


「おーおー、そんなに怖かったのか〜凛花」

「………うん…」


 やっべ…こんな素直な凛花久しぶりに見た。いつもの凛花も超可愛いけどこっちも同じくらい可愛いな。


「恭弥…」

「ん?」

「もっとぎゅーってしなさい」

「っ…」


 ナチュラルな超破壊攻撃。はかいこうせんが急所に当たったくらいのダメージである。

 精神がガリガリ削られてくるが、流石に弱った恋人に手を出すほどの屑ではない。


「これで満足かね?」

「……じゃあ次は…キスしなさい」

「凛花さん? この状況を楽しんでないですか?」


 これは、命令をすればなんでも言うことを聞いてくれると言う構図が完成してしまっている様な気がした俺は、そう問いかける。すると顔を下ろしいた凛花が顔をあげる。


「ばれた?」

「そりゃあ…まぁまぁ長い間付き合ってますからね?」

「むぅ…」


 バレた事が癪に触ったのか、より一層俺を抱きしめる力が強くなる。


「んじゃ…寝るか」

「……うん…」


 凛花は恐怖から安心の落差がすごかったのかすぐに眠った。


「……ちょーっとごめんな…」


 それから10分程。一度寝たらすぐには目を覚まさない凛花だが、それでもちょっとは警戒してそーっと体を引いて、そーっと部屋から出ていく。キッチンから塩と小皿を拝借し、バレないように玄関の扉を開けて盛り塩を置く。


「悪いんだけど出て行ってね? ここ俺の大切な人の家だから」


 多分凛花ってば…そういうのに取り憑かれやすい体質なんだろうなぁ…。

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俺の恋人が可愛すぎる スライム @5656200391

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