1章
第4話 秀馬
工藤秀馬は退屈だった。彼はいわゆる現在の世界の異端児、ストレンジャーだった。
彼の家族はストレンジャーではなく、そして、彼の友人も一人を除いては普通だった。
秀馬は東京都住みであるが、現在は親元から離れて北海道で牧場を営んでいる。彼は農業に興味があったからである。彼の両親はなぜ?と思っており、また、秀馬がストレンジャーと心配していたが、秀馬は北海道でのんびりしたいとうまく良い、現在は北海道で一人暮らしをしている。
秀馬は父と母の三人暮らしだった。彼の両親もまた認知バイアスゲームに夢中だった。
そして、それを見ていた秀馬は彼らこそ異常なのではと思い始めたのである。
自分の命をかけてゲームをする。正直言ってわからなかった。秀馬は今はもうほとんどない紙媒体の本を大量に昔から両親に隠れて読んでいた。昔の人間は勉強をし、労働をし、お金をもらい、必死に働き、様々な人間と触れ合っていたと書かれている。それはどれほど嫌な人間でも仕事や学校がある以上、関わっていかないといけないものである。
だが、今は違う。嫌いな人間とは関わらなくても良いし、勉強もしなくて良い、労働もしなくて良い。何もしなくて良いのである。そして、いつしか大半の人間は自分の命さえもどうでも良くなっていたのである。
秀馬の両親もいつ自分が死ぬかわからない認知バイアスゲームに夢中だった。そう、本当になぜあんなものが面白いのかわからなかった。ただのリアルな人殺しゲームである。だが、99パーセントの人間はあのゲームに夢中だった。
そして、彼は自分の両親がいつ死ぬかわからない恐怖もあった。だからこそ、彼は自分の家から離れたいという考えもあったのである。
そして、今日も認知バイアスゲームが世界中で行われている。
ゲームに参加しない傍観者たちはゲームに参加している人間にいたずら、いや、そんな生易しいものではない。罰を下しているのである。ゲームを見ている傍観者もプレイヤーもバカばかりである。
そう思いながら、今日の認知バイアスゲームをテレビ越しで見ていたが、見るに耐えないものであった。傍観者たちは見ているのが面白くないと思った瞬間から、プレイヤーにペナルティを下していく。
それを見ている傍観者たちは認知バイアスゲームのチャットルームで、ざまあ、ちょろ、ワロタなどくだらない言葉ばかり言っていた。
参加者も傍観者もほんとにくだらなかった。
そもそも参加者はこれではただ死ににいくものなのに、なんで参加するのか?それもストレンジャーである秀馬には全く理解できなかった。
秀馬は認知バイアスゲームのチャンネルを消し、農地で畑を耕しに行った。
あらかた耕したら、いつの間にか日が暮れて夜になろうとしていた。秀馬は今年は人参、大根、キャベツなど野菜中心のものを作り、そして、牛を飼い、牛乳を作ることにしている。昔なら、牧場では何人ものスタッフと人件費など様々な手続きがあったが、現在は一人で全てできるようになっている。
秀馬は郵便ポストに届いた今日の夕食を持ちにいき、台所でコップに牛乳を注いで少し早い、夕食を食べることにした。
彼は夕食を食べながら、家のAIに風呂の用意をするように頼んだあと、彼はもう一度、認知バイアスゲームのチャンネルを見てみることにした。
今日のゲームの参加者の中に父と母がそこに写っていた。
認知バイアスと傍観者(無職) zero @kaedezero
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