第24話 祝、初彼女
遂に約束の日が来てしまった……。
俺は重い足を引き摺りながら、約束の場所に向かっていた。
何故こんなにも緊張しているのか、わからない……。
元会長との練習を重ね告白の準備は完璧な筈……。
そもそも、自分でもこの告白が失敗するなんて思っていない……勿論相思相愛なのはわかっている……。
でもこのわけのわからない緊張は一体どうしたのか? 子供の頃から夢見ていた運命の人と遂に恋人になれるからなのか?
何か……何か心の奥で引っ掛かっているものがある……。
かといって行かない分けにはいかない、告白しないなんて選択肢は無い。
もう結論は出ている……今日俺は彼女に告白し、彼女と恋人同士になる……でも……。
そんな考えがぐるぐると頭の中で駆け回る。俺はそんな状態でノロノロと歩いていたが、遂に約束の公園に到着してしまった。
公園の入り口で彼女のいるであろうベンチを遠くから見ると、今回……彼女は……きちんといた、存在した。
一時期は幻だったんでは無いかとさえ思った彼女は間違いなくこの世に存在した、してくれていた。
遠目からでもわかる……彼女は今日もオーラに包まれていた。
ベンチに腰かける銀髪の妖精は、ノースリーブにミニスカート姿とちょっと露出の高い格好をしている……その少し露出の高い服から出ているすらりとした四肢と銀色の髪は太陽の光に照らされキラキラと光輝いていた。
俺は彼女のその姿を見て立ち止まってしまう……こんな美少女が、こんな天使が……女神が……本当に俺の運命の人なのか? って……本当に今日告白するのかって……。
神に、女神に恋をするなんておこがましいんじゃ?……俺はひょっとして今からとんでもない事をしようとしているんじゃないか?
そんな思いに苛まれてしまう。
「まずい」……約束の時間はとうに過ぎている……。
緊張が頂点に達している……足が動かない……。
このまま後退りしてしまいたい……帰ってしまいたい……そんな思いが頭に浮かぶ。
しばらく立ち尽くしたまま彼女を遠くから見ていると、俺が来ないからか、彼女は腕時計を眺めると辺りをキョロキョロし始めた。
まずい、見つかる……まずい? 何故?
もう自分が何を考えているかわからない、パニック寸前の精神状態だ。
「! た、たっくん!」
キョロキョロとしていた彼女が公園の入口で佇む俺を見つける。
その瞬間、彼女が泣きそうな顔で立ち上がると俺に向かって一目に散走って来る。
──遂に見つかった……いや見つけて貰った……。
彼女は俺の前に走り寄るとそのまま俺の両手を握った。
……するとまた電気が、強烈な静電気の様なショックが彼女の手から伝わる。
今度は驚かない、それが当たり前の様に俺は受け止めた。
やはりこの人は運命の人……。
「たっくん……逢いたかったです……ずっとずっと……逢いたかったですう」
俺を見つめ涙ぐむ詩ちゃん……ごめん……俺はさっき帰ろうとした事、不安に思った事を心の中で謝った。
「遅れてごめん……時間大丈夫?」
「まだ大丈夫ですう、逢えて良かったですう」
満面に笑みで俺を見つめそう答える詩ちゃん……ああ、可愛い、綺麗……俺の運命の人……。
「俺も……逢いたかった……ずっとずっと……逢いたかった…………詩ちゃん……君は俺の運命の人……俺の恋人になって貰えますか?」
元会長と散々練習した格好いいセリフは全部飛んでしまった……でもこれが俺の気持ち、これ以外には何も無い……。
彼女の事は何も知らない……一目惚れってそういう事なんだ……運命の人と俺が感じただけなんだ……。
でも、だから知りたい、これから知っていきたい……そう思った……。
俺のセリフを聞いた詩ちゃんは少し驚いた様子で目を真ん丸にして俺をじっと見つめる……そして……少し後ろに下がって俺から少し距離を取るとニッコリ笑って言った。
「ふつつか者ですが……宜しくお願い致します」
そう言って深々とお辞儀をする詩ちゃん……。
「こ、こちらこそ……」
俺も吊られてお辞儀をする……そしてゆっくりとお互い頭を上げて顔を見合わせると、ケラケラと笑った……。
婆ちゃん……俺、婆ちゃんが言っていた運命の人が彼女になりました。
笑いながら一瞬空を見上げ、婆ちゃんに、大好きだった天国の婆ちゃんに、そう報告した。
【あとがき】
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JS物語、運命の人は小学生だった……でも俺はロリコンじゃないからな! 新名天生 @Niinaamesyou
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