日本のスーパーがまるごと異世界に ! オールラウンダーの作者が描く。


 作者、奥森ゆうやさんの武器ともいえる魅力の一つは、〝真面目とギャグが素で絡み合う〟ところ。日本のスーパーマーケットを、ゲームの世界にいるようなモンスターたちが経営したらどうなるか・・・が、真面目におかしく、それでいてとてもリアルに描かれています。

 店内放送を初めて聞いたモンスターたちが、「神のお告げだ。」と驚く場面ですっかりやられました。ほかにも、いろいろ(笑)。
 
 さらにはキャラクターのほとんどかモンスターでありながら、人情味あふれるドラマを盛り込んであります。

 そこには、物語に必要な要素をじっくり考えながら執筆するという、作者の深い人間性が現れていて、それはキャラクターそれぞれの情緒からも伝わってきました。

 様々なジャンルの物語を作り上げてきた作者様。多種多様に書くことができる力を発揮されており、本作にもいろんなテイストが自然とにじみ出しています。

 泣けて笑えてほっこりする、誰でも楽しめる万人向け異世界転移ファンタジーです。

 また、「自分たちはまだ死んでいない。ならば、この異世界をどう生き抜くか・・・。」を主人公たちが懸命に考えたり、従業員のモンスターが、現実世界の働く人々と同じようにストレスを感じたり、それでも互いに思いやりながら、大好きなにこにこマートの従業員として一緒に成長していく姿に、つい応援したくなってしまう。

 読者を、そんなドラマに引き込みながらも、かたや異世界ファンタジーということも忘れていません。

 電気もガスも通っていない環境で、にこにこマートを営業するため、従業員がモンスターだという特色を利用するなど、うまく構成されています。どう工夫してあるかは、ぜひ作中で。

 主人公は温厚な中年男性、沢渡店長のようですが、名脇役の青年、高橋くんがいることで、また幅広い層に対応しているようです。若いパン職人のカワイイ女性も登場します。

 異世界転移(転生)ものを「もういいかな・・・。」とか「私はちょっと・・・。」と思われている(かもしれない)そこのあなたも。少し、のぞいてみませんか。人気ジャンルの中で「これは・・・!」と思う、光る個性に出会えますよ。

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