第2話

今、一瞬だけ見えた皇帝の邪悪な笑み



僕は懸念していた事を考える






「僕らを戦争に利用する気か・・・」






幸い周りが騒いでいた為今の言葉は皇帝達には届かなかった



周りが煩いのも、今は少し有難い



しかし、隣にいた奴らには聴こえていたみたいだ






「るいるい、やっぱり君もそう思う?」






変な渾名で呼んでくるこのは『新垣にいがき 紗南さな』、僕のオタク仲間だ



年がら年中マフラーを付けていて、変な渾名を付ける事が得意、更には僕に好意を向けてくれる女の子だ



僕は普段好意を向けられる事が無いだけで結構敏感だ、決して鈍感では無い



しかも紗南はめちゃくちゃ可愛い



普段マフラーで顔が隠れているから誰も気づかないけど、めちゃくちゃ可愛い



偶々マフラーを外している時に出会ってしまって、思わず可愛いって口に出した時に好意を持たれたと思う



顔が真っ赤になったので間違いない



紗南は親からも可愛いと言われた事が無いらしく、初めて可愛いと言ってくれた僕の事が好きになったんだと思う



おいそこ!チョロインとか言うな!



因みに紗南の好きなジャンルはBL



僕には分からないジャンルだからそういう話オタク話は出来ないけど



僕はさっきの事を話す為に、小声で紗南に話した






「紗南も気づいたでしょ、あの顔」



「うん、すっごい悪い顔してたね」



「少し考えてみたんだけど、やっぱりこの国には何かがある」



「私は余り知識はないから確定は出来ないけどね」



「流石に知識が有っても確定は出来無いよ、だけどテンプレ通りなら・・・」



「2人とも、何楽しそうに話しているんだお?」






やっと来たか



このや◯夫みたいな喋り方をする此奴は、『田中たなか 浩史ひろふみ



名前はめちゃくちゃ普通だけど、格好は全然普通じゃない



このやる◯みたいな喋り方、おじさんの様なビール腹、カッターシャツの下は最近紳士ロリコンに人気の『マジカルアイドル☆プリンセス』の主役の女の子がカラーコピーされたVネックTシャツ、汚らしい髭面



お前同級生か?って言いたくなる様な奴だ



だけどこういう事態の時は(多分)僕並みに役に立つ



浩史の好きなジャンルはファンタジー系と少女漫画・アニメ系



ファンタジー系は僕の一番好きなジャンルなんだけど、浩史は僕に勝るとも劣らない知識量がある



僕と紗南と浩史が一緒に考えればこういう系異世界転移・転生は100%結論が出る






「浩史は見た?あの顔」



「もちのろん、見たんだお・・・俺と瑠衣氏と紗南氏が考えている事は同じだと思うんだお」



「ひろっぴーもそう思うよね、二人ともこれからどうする」



「まだ結論は出せないけど、この世界についてある程度分かったら、僕らでこの国を出よう」



「俺も同意するんだお、紗南氏はどうするんだお?」



「私もるいるいの意見にさんせー、るいるいが居ないと詰まらないし」



「・・・ありがとう、紗南、浩史」






この2人は他の生徒と違って信頼出来る



僕らが密かに決意した時、皇帝が声を上げた






「勇者達よ、儂らに協力してくれて感謝する、これから貴殿らが強くなる為の儀式を始めようと思う」



「私達が強くなる為の儀式、ですか?」



「ああ、お主らの世界では違ったかもしれんが、儂らの世界では5歳の誕生日に『職業』を得ることが出来るんじゃよ」






この後も皇帝の無駄に長い話は続いた



皇帝の長い話を分かりやすく言うと、



・5歳の誕生日で職業を得ることが出来る


・職業は数えきれない程あり、未だ確認されていないものもある


・職業を得る事で、職業に適したスキルを得る事が出来る


・職業とスキルは比例する、つまり優秀な職業なら優秀なスキルが手に入る



という事らしい



この程度の量を1時間に渡って話していたから、無駄でしか無い



まあ序盤で強い職業が手に入れば後々生きやすくなるな



まあそこは運でしかないんだけど






「それではこれから職業の提示を与える、神父アンドレクサ卿の話を聞いてくれ」






皇帝が向いた方に教会の神父の様な格好をしたおじさんがいた



黒を基調としている上に金の十字架の刺繍が胸の所にある服を着ている



手には銀色の十字架を持っている






「お久しぶりです、皇帝ファーバサル様」



「うむ、よくぞ参ったアンドレクサ卿よ、勇者達の選定は頼んだぞ」



「はい、お任せを」






神父は指を弾く



すると教皇の後ろの扉が開いた



扉の向こうには誰も居ないようだ



多分だけど魔法かな、僕も使ってみたい



扉の向こうにみんなが移動する



これから始まる職業を決める儀式を前に僕は興奮していた



ただ僕はこれだけは予期していなかった



まさかあんな事になるなんて

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