第2話 女子プロレスラー自殺事件(2020年5月)

映像番組の事件ではありますが、番組はヤラセであり、台本(原作)はあったと考えて考察をします。


事件概要と顛末

台本なしが売りの恋愛バラエティ番組で、番組内でトラブルを起こしていた女子プロレスラーが、ネットでの多くの誹謗中傷により自殺(と推定される)。

「匿名での SNS投稿での無責任な誹謗中傷」と「番組側」が死に追いやったと問題視されています。彼女のご冥福をお祈り申し上げます。


考察

この事件の何が問題なのか?


原作ありの実写ドラマ出演者であっても、悪役の役者は視聴者から「悪人」や「性格悪い」と勘違いされる事が多々あります。

役者さんの多くは、これを演技の為せる技と、良い評価と捉える場合が多いです。もちろん精神的には傷付くそうですけど。


今回の番組は、「台本なしと明言している」「本人が本人名で出演していて、仕事や私生活のシーンも入る」ため、意図的に視聴者に「これはフィクションではなく事実」と認識させるよう演出されています。

「UFOや心霊番組の映像は、ほぼトリック撮影」「某格闘技の試合には台本がある」と同じ、暗黙の了解的な部分を認識させずに、


「視聴者の多くを騙してしまい、わざと暴走させた点」

※芸能界における炎上とは、一般的には「話題作りの戦略成功」です。


「悪役(ヒール)である彼女本人が、自分の評価だと勘違いしてしまった点」


「彼女のメンタル悪化を軽視し、適切な対処をしなかった番組側の無責任な点」

が問題です。


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どうすれば自殺は防げたのか?

・台本あり(フィクション)と明記して、本名ではなく、役者名や役者設定として番組に出す。

・SNSで誹謗中傷が増えた場合は、演出である事を番組側から伝えたり、SNSを早期に閉鎖する。

・SNSで誹謗中傷がひどい場合は、早期に法的処置を取り、番組側からコメントを出す。

・特定の出演者が悪者扱いにならないように、その後の展開を変更して視聴者の矛先を収める。

・出演者の精神状態に日々気を使い、精神的に病んだらカウンセリングや降板を行う。


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分析をして小説に何を活かせばいいのか?


・元ネタのある設定は、名誉毀損に気をつける。

自身の作品が実写化される機会は奇跡でもなければ一般人にはないですが、実際にあった事件の類似設定で事件物や推理トリックを書く場合や、自身の経験や知り合いの人物を架空設定を織り交ぜて物語を作ったりした場合、人物の特定や名誉毀損となる場合はあります。


横溝正史の「八つ墓村」は、明らかに実際にあった事件「津山三十人殺し(1938年)」を参考に作られていますが、作品を先に知ってから事件を知った人は「作品内のフィクション」まで「現実に遭った事件」ではないかとの思い込みが強くなりやすいです。

その時に、事件に関わった犯人や関係者の情報が歪んで伝達され、差別や偏見を生む可能性を秘めています。

現実が作品(フィクション)を生んだはずなのに、作品(フィクション)側が現実の認識を歪めていきます。


坂本龍馬の史実と、司馬遼太郎の「竜馬がゆく」の物語エピソード(創作)がごちゃ混ぜになる人も多いですし、真田幸村(真田信繁)は史実ではなく、創作である真田十勇士の物語のイメージ像が強くなっています。


・現実に近いフィクション設定は「フィクションである事」を普段より強調する。

「池袋ウエストゲートパーク」(石田衣良)を読んで、池袋はカラーギャングまみれの深刻に怖い町と勘違いした人もいますし、松本清張の「波の塔」の影響で青木ヶ原樹海で美しく死ねると自殺志願者が集まりまくってしまったり、作品(フィクション)側が有名になれば、現実側に影響を与える場合があります。


必殺仕事人とか、ぼんやりテレビで見てしまいますが、法で裁けない悪を極秘で殺したら現実ではヒーローではなく犯罪者な訳で、じわじわとテロリスト思想に染まっているとも言えます。

漫画原作の美食探偵を実写ドラマで見ていますが、極悪な相手を被害者側が毒殺していって警察に捕まらないのはある意味、必殺仕事人テイストで危険思想を助長します。

絵本の桃太郎は、ニコニコ笑顔で日本刀を振り回していますが、普通に考えれば確実に教育に悪いです。

「フィクションです」や「現実でやったら犯罪です」などのテロップや注意書きなどで、現実と架空の境目をきちんと読者に意識させる事は重要です。


・物語に使う情報は、複数の情報源から事実確認をする。

・風評被害を起こさないよう、マイナス情報の現実の地名利用には注意する。

ネット上では創作と事実が、コピペや転載を繰り返すうちに混ざって間違ってくる場合があります。怪談や都市伝説は、特にその傾向があります。

2020年映画化の犬鳴村とかは、現実の犬鳴峠・旧犬鳴トンネルと関わってきますし、1988年の旧犬鳴トンネルでの事件も怪談と混じってきてしまっています。

遺族や犯人側もまだ生きていますし、地元の人から見れば確実に風評被害でしょう。


・読者側が勘違いしないように注意する。暗黙の了解は若年層には効きにくい。

それと、若年層、生まれた時点からネットが普及している世代は、ネット情報を盲目に信じてしまう傾向があります。

新聞やテレビなどの裏のしっかりしたプレスリリースと、個人の書くデタラメな嫌韓記事を同レベルで信用したり、グルメサイトで1件の「美味しくない批評」があれば、絶対にその店は美味しくないと信じてしまう傾向があります。個人への匿名での悪口も1件の悪口が、まるで全世界の人の総意と感じてしまいやすい錯覚があります。

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世間での文章関係の事件考察 よるもあけぼの @yorumoakebono

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