第11話 「運否天賦 (前編)」

今日はキュオーンデア皆が、セシルの家に集められていた。


「セシル話って何?」


「実は昨日文献ぶんけんを発見したんです」


そういってセシルが巻物を広げるが何を書いているか全く読めない。


「これはなんて書いてあるんだ?セシル」


「私も全部や訳せていないのだけど、ここにはこう書いてあるわ、『八犬士表れるは、悪の目覚めを予言した物、その悪八人の力で無ければ打ち倒せず』って」


「は、八人ですか?」


テイラが人数を読み上げる。

1.セシル 2.千星 3.カガヤ 4.テイラ 5.吟 6.乃奈 7.リリ(←ここには居ない)


「あと一人か」


「えぇ私達がこうやって集まっているのはその悪が目覚めようとしているからだわ、なんとしても八人集まってなんとかしないと」


「そうだね、けどその悪って具体的になんなの?」


「さぁそこまで訳が終わっていないけど、社巣魔しゃすまを見ていてば解るように、人間に害する物じゃないかしら」


「・・・拙者やるぞ」


「乗りかかった舟だね」


「も、もちろん、やりますよぉ」


皆がそれぞれに言う。

これから始まる戦いに向けて気持ちを新たにして。 


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「みなさん盛り上がっているかぁぁぁ!!」


「イエーイ」


「えぇ本日は学校に許可を頂き、生徒による自由発表会を行いたいと思います、みなさんとことん楽しんでくださいね!!!」


「うぉぉぉぉぉーーーー!!」


「私司会進行を務め差さて頂きます、1年B組の空根そらねエトラです、どうぞよろしく」


今日は日曜日だがカガヤ達の学校ではエトラが学校に取り次ぎ、学生自由発表会が行われている、基本休みの為、観覧は自由参加なのだが大勢の生徒、そして他校や一般人の姿も見える。

その時、ステージ横のテントでは、


「ありがとう、リリさん本当に来てくれて」


「かまわないよ事務所にも許可はもらってるし、前に言ったけど私ファンは大切にするようにしているの」


悠はアイドル好きの為、現役アイドル稲村いなむらリリが参加してくれた事に感動している。


「さすがゴッデス、ほらカガヤもお礼を言って」


「別にアタシが呼んだわけじゃないし」


「たしかにね、私はファンの人達の為に来たのはたしかだね、あなたのためじゃないわ」


リリの言葉にムッとなるカガヤ、どうもこの二人は相性が悪いのかケンカばかりだ。


「けど、来て欲しいとお願いしてきたのはカガヤあなたでしょ、それは忘れているんじゃない?」


「そ、それはエトラや悠に頼まれて」


「せっかく来てあげたのに、そんな態度取るんだ」


「んー」


「カガヤ、来てくれてたリリさんに悪いよ」


「ふん、いいんだもん」


ふて腐れてあっちを向くカガヤ。

それをみてにやりと笑うリリ。


「ふふふマネージャーとしては、こうゆうイベントのリリちゃんが自主的に参加したいって言ってくれて本当にうれしいわ、あなたは容姿はいいけどその周りに勘違いされてしまう事があるから」


「恵さん、もういいから」


「あぁマネージャーさんよろしくです、私畑山 悠はたけやま ゆう って言います」


優雅丁寧に挨拶をする。


「こんにちは私恵めぐみ  めぐみっていいます、変わった名前でしょ?結婚して名字が変わったからこんな名前になったのよ、ホホホ」


悠は少し圧倒された。


「そういえば和歌がいないみたいだけど、誰かしらない?」


そうエトラが準備したイベントに友達の和歌の姿がないのは不思議だとカガヤはクラスメイトに問いかける。


「あぁ相原なら用事があるとかで来れないのことだぞ、ワシも又聞きだから詳しくは無いが」


クラスメイトの岩本がカガヤに答える。


「そういえば、最近用事多いな和歌、大丈夫なのかな?」


「エトラちゃんは大丈夫って言ってたから、心配しなくてもイイと思うけど」


同じくクラスメイトの朝陽も答える、カガヤととりあえず納得と首を振る。


「リリ、カガヤ」


後ろから声が聞こえ振り向くとセシルや千星などの姿があった。


「みんな来てくれたんだ」


カガヤは喜んで近づく、リリは集中しているのか笑顔で手を振るだけで近づきはしない。


「ふふ、カガヤに貰っていたこのフリーパスでしたかしら、これをみせたらここまで案内して頂きました。」


「拙者は無くしてしまったが、なんとか説得していれてもらったぞ」


「アンタねぇ、その説得どれだけ大変だったか」


「うん、ウチずっとしてるから眠りそうになったよ」


「そう、大変だったね」


キュオーンデアの仲間たちと楽しく会話するカガヤ。


「ふおぉぉぉ!!カガヤさん今回呼んでいただき本当にありがとうざいます!!こんな近くでリリさんの歌が聴けるなんて!!」


乃奈も喜んでいるが、その興奮度は他とは違うようだ。


「うん、乃奈も来てくれてありがとう」


カガヤも笑顔で答える。


「じゃ私リリさんにも挨拶してきます!!」


そう言ってリリの所に走っていってしまう乃奈、話かけれるリリの額に少し汗が見えるようだ。


「けどセシルよく来られたね、体は大丈夫?」


いつも布団に横たわるセシルを見ているカガヤからは心配でしか無かったが、セシルは笑顔で立っている。


「少しくらいなら大丈夫ですよ、ご心配ありがとうね」


それを聞いてほっとするカガヤ。


「では!今回は特別ゲストをお招きしております、お客様にはこの方がいらっしゃるから来られた方も多いのでは?では『ゴッデス』の稲村リリさんですどうぞ!!」


客席から歓声があがる。


「じゃ行ってくるわ、乃奈また後でね、カガヤよ~くみていないさいよ」


「はいはい」


そう言ってステージにリリが上がるとさらに大きな歓声が沸き起こる。


「ねぇカガヤ?そんなに仲悪そうなのに、なんでリリちゃんよく仲間にしたね」


悠は当然の疑問を問いかけるが、カガヤとしてはムスッとしている。


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リリは一曲披露した後、ステージに残り審査委員を務める、あらわはたまにステージ裏に降りてきて様子をみている。


「へへ、露どう」


カガヤが意地悪く露に話しかける。


「うん、順調だよ」


「あらカガヤその人は?」


後ろに来ていたセシルに話しかけられる。


「あぁセシル、露、こちら生坂いくさかセシル、最近アタシが仲良くさせて貰ってる人だよ、セシルこちら海兵 露、アタシの幼なじみなんだ」


「あらそうですか、仲がよろしいようで」


セシルは目を細め微笑む。


「まぁね、幼稚園からずっと一緒だからね、お互い一緒にお風呂にも入った仲だしね」


「か、カガヤ!女の子がそんな事言うんじゃ無いよ」


「続きまして、こちら漫才を披露して頂くのは、テチルソチルのお二人です!!」


ステージからエトラのアナウンスが流れる。


「あ、行かないと、じゃね」


「うん行ってらっしゃい」


カガヤとセシルはそれを見送る。


「じゃわたしもあっちに行ってますね」


「あ、うんありがとう」


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「続きまして、女性だけで結成されたバンドです、では登場して頂きましょう『グラス』の皆さんです」


イベントが始まってから1時間が経過したが、熱気興奮は衰えを知らず、客も盛り上がっている。


「すごいねエトラ、こんなステージ進行して」


「だね、ありゃ大物になるかもね」


「カガヤ!!」


呼ばれ振り向くカガヤの視線に千星が写る。


「ん?どうしたの千星」


「先ほど、セシルがいやな予感がして占いをした所社巣魔しゃすまがあらわれると出たらしい」


「え?どこに?」


「それが隣町になりそうなんだ、占いではかなり強敵と出ているらしくて、セシル以外みんなで行こうとなったが、カガヤはどうする?」


「そうなの、行くよ、強敵なら油断できないし」


カガヤの答えに頷く千星。


「ごめん悠、行ってくるからあとよろしく」


「うん、ご飯休憩とか言っておくから」


「ありがとう」


そう言って走り出すカガヤたち、遠目で乃奈がこけているのが見える。


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ジャーン!!


曲が終わり、グラス達は数曲披露してステージで手を振っている。


「いやとっても楽しい曲でしたね、どうですか稲村さん?」


「そうね、あんないい曲演奏されたら私が目立たなくなるからね、はやく下がって欲しいわ」


リリの毒舌もいい具合で客にも受けているようだ。


「うん、こっちは大丈夫そうだね、カガヤ達大丈夫かな?」


悠はステージと隣町と心配している。


「では続きまして、」


「ちょっとお待ちになって」


突然ステージ上に女性が降り立った、髪を上でまとめ、背中に蜘蛛足のようなものを背負っている。


客は突然出てきた女性にわいているが、エトラは焦っていた。


「すいません乱入はこまるんですけど」


「ふふふ、ごめんなさいね、私”艶美姫あでみひめ ”と申しますどうぞよろしく」


「あでみひめって・・・たしか!!」


リリが驚き立ち上がる、その瞬間ステージの端に艶美姫あでみひめが手から矢を飛ばす。


バアァン!!


ステージの端が壊れ、残骸が落ちる。


「キ、キャァァアァ!!!」


危ないと察知した客が叫ぶ。

客達はステージから離れようと後ろに下がり距離を取り始める。


「なにあれ?」


「たしかあいつは社巣魔しゃすまのボスよ、あなたも逃げて!!」


リリはそう言って艶美姫に近づこうとする。


「あぶないリリちゃん!!」


突然ステージ裏からマネージャーの恵がリリに抱き、その反動で倒れてしまう。


「な、恵さん?」


「わ、わ、わたしは、ま、マネージャーなの!!リリちゃんを守らないいけないのぉぉ!!」


「ちょ、わかったから離して、恵さん!」


リリが訴えかけても、恵には聞こえていないようだ。


「ふふふ、騒がしい事」


「おいお前!!」


リリと艶美姫あでみひめの間に露が木刀を持ってあらわれる。


「僕は警備も任されているんだ、まわりの人に手を出させはしないよ!!」


「ふふふ、可愛いわね」


露にはこの女性が危険だと本能で解った、問答無用で斬りかかった。


「でやぁ」


しかし艶美姫あでみひめはそれを背中の蜘蛛の足で受け止め木刀を弾いてしまう。


「ぐ、くそう」


その場にうずくまる露、艶美姫あでみひめは近づき露の顔を見る。


「ふふふ、あなたがいいわね」


「え?」


艶美姫あでみひめが露の額を付くと露は眠るように気を失った。


そして蜘蛛の足で露を持ち上げた。


「そちらの司会者の方」


突然エトラに話しかけてくる。


「な、なにやる気?」


「キュオーンデアの記事をこの学校で書いているのはあなたでしょ?ではあの子達にメッセージをお願い、この男を帰して欲しければ我がアジトに来いと」


「そ、そんな、つかそのアジトってどこよ」


「ふふふ、それは自分たちで探せと伝えて、では失礼するわ」


そう言って艶美姫あでみひめは屋上に跳び上がったと思うと、露をつれその場を後にした。


「ま、まちなさいよ!!」


リリは大声で叫ぶがもちろん待ってはくれない。


「ちょ、恵さんもう大丈夫だから離れて!!」


「い、いいえ、リリさんは私が守ります、だってマネージャーなんですものぉぉ」


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「いや~すごいショーだったなぁ」


「ほんと、ここのイベントまたやるなら見に来ないと」


イベントが終わり帰って行く客達。


あの後エトラがイベントだと発表し客達は大いにわいた。

まぁ現実的に手から矢は放ち壁を壊したり、屋上に飛び上がるなんか本当だとは信じられないのだから。


「リリ!!」


カガヤ達が血相を変えてカガヤの教室に表れる。


「露が攫われたって本当?」


「ええ、本当」


あのあとリリが神具を使いカガヤ達に報告した。

結論から言うと隣町に社巣魔は表れなかった、急いで帰ってたカガヤ達だが時すでに遅しだったのだ。


「ごめんなさい、私も少し席を離れていた間に」


セシルも申し訳なさそうに言う。


「学校のことはあなたの友達がなんとかしてくれるらしいわ、とりあえずあの男の子が攫われた事実を知っているのはカガヤの友達と私達だけよ」


「助けに行かないと、どこに行ったの!?」


「それが、あいつは『アジトに来い』って言ったけど、場所までは」


「そんな」


「しかし、やつら露君をなんで誘ったんだ?」


「そんなの、どうでもいいよ、こうしている間にも露は何をされているか」


「落ち着いてカガヤ、助けに行きたくても場所がわからないって言っているでしょう?」


「リリにはわからないでしょ?幼なじみが誘れたんだよ」


「落ち着いて二人とも、この間文面を見せたの覚えている?」


セシルが仲裁し話を始める。


「あの文の中に気になる物があったんだけど、『悪を封印せし場所』って載っていたの、だからもしかして」


「けど、それが当たっていたとして、まだ拙者達は7人、立ち向かうことができるのか?」


「・・・アタシは行くよ、八人目探している時間は無いよ」


「私も行くは、私の目の前であんな事されて黙っていられたら、アイドルなんてやってないわ」


「じゃ急ぎましょう、案内するわ」


そう言って教室を後にしていくみんな。


「ど、ど、どうしてこんな事に、あ、アタシなんか」


「乃奈ちゃんしっかり、あなたは怖いなら残ってもイイよ、アタシから言っておくから」


動揺している乃奈に吟が話しかける。


「だ、だ、大丈夫です!一人足りないのに私まで居なくなったらダメですから」


そう言って走り出す乃奈、吟もその後を追う。


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「ここら辺ね」


セシルは巻物を見ながら皆を案内している。


「ここって商店街?」


やってきたのは学校近くの商店街だったのだ。


「セシル本当にここでイイの?」


「さぁ私も文面通りに来ただけだから」


そう言いながら商店街を歩いて行く。


「・・・ここみたいね」


セシルが指さしたのは何も無い壁だった。


「ここ?」


「えぇそうみたいね」


「いやけど何も無いよ」


当然の疑問を口々にする。


「この巻物によるとここをまっすぐね」


セシルが壁に触れるがただの壁のようだ。


「ねぇねぇ姉さん達、おいしいお店知らない?」


「はい」


後方に立っていた、カガヤと吟が振り向く。


「ねぇ、俺たち腹減ってるんだ、おしえ・・・」


「あぁー!!あんた達海にいたゴミ捨て男!!」


「ゲッ!おまえ達あのときの!!」


「おい、八幡根やばたね、やばいって!」


後ろにいた男達が聞き覚えのあるセリフで、八幡根やばたねと呼ばれた男を止める。


「ちっ、おまえ達になんか様ねぇよ!ホラいくぞ」


そう言って八幡根やばたね達はアーケードを行ってしまう。


「なんだったんだ?」


「さぁ?」


カガヤと吟は顔をかしげる。


「けど、ここかわってるね」


テイラの声に二人はみんなの方に振り向く。

テイラが言うようにその壁は商店街のくの字に曲がった道の中央にあり、変な壁である。


「・・・ここ少し上り坂になってるね」


リリが地面を見ながら言う、確かに壁に向かって上り坂になっている。


「けど、何もないのでは、しようがな・・・どあ!」


「「千星」」


壁にもたれかかろうとした千星が壁の中に姿を消す。


「ど、どうなってる!?」


壁の向こうから千星の声が聞こえる。


「千星無事?」


「あぁ転んだだけだ、けどそっちに戻れない」


「・・・もしかして」


セシルは恐る恐る壁に触れると、手が壁に埋まる。


「せ、セシル?」


「わかったわ、この壁を意識せずに触れると通り抜けられるの、こうやって」


セシルとそう言うと壁を通り抜けていく。


「本当に入っちゃった」


カガヤ達は自分の目が信じられない。


「みなさん、先を急ぐから、付いてきて」


セシルの声に皆同じように後に続く。

壁を抜けると其処には不気味な雰囲気な商店街がある。


「この奥よ急ぎましょう」


セシルはそう言って足早に街の中に入っていく。


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ずいぶん歩いて行くと目の前に大きな木が見える、しかしその木はあまりにも巨大でこの木だけで街一つが入るのではと思うほど巨大だ。


「あの鳥居の向こうよ」


セシルが指さす方に木の根に包まれかけた鳥居が見え、階段がその奥に続き、大きな穴が見える。


「ここからは棄権だと思うからみんな神具を付けて」


そう言われ皆、神具を首に装着する。


「「開権犬実 かいごんけんじつ!!」」


七人の姿が色鮮やかな衣装に替わり、変身が完了する。


「よし急ごう!!」


七人は急ぎ木の中に入っていく。


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木の中は薄暗く、目の前に一本道が延びているのでそれをしばらく進んでいると三つ叉に分かれ道が表れる。


「どれいく?」


「真ん中!!真ん中にしよう!!」


テイラと千星がおのおのしゃべる中、セシルが意見を言う。


「どれが正解かもわかりませんし、時間もありません、ここは三手に別れて進みましょう」


セシルはそばに合った草を引きぬく。


「草の先端を三種類におりました、これで組決めをしましょう」


「わかったよ」


そう言って七人はセシルの手から草を引き、組み分けはこうなった。


(セシル、乃奈)組

(千星、テイラ、吟)組

(カガヤ、リリ)組


「コレで決定ね」


「げ、あたしリリと?」


「そうね、足をひっぱらないでよ」


二人は今にもケンカしそうな勢いだ。


「ケンカしている場合じゃないでしょ、じゃ私と乃奈は左に行くわ」


「は、はい、頑張ります」


二人はそのまま左の道にいく。


「じゃ拙者らは真ん中に」


「二人ともケンカもほどほどにな」


「じゃ後でね」


そして三人も真ん中の道に入っていく。


「・・・じゃいきましょう」


「・・・うんしょうがないね」


カガヤとリリは右の道に入っていく。


------------


「もう大分進んだかな?」


「たぶんね」


カガヤとリリは20分ほど奥に進んでいた。


「ん?あれ出口かな?」


道の奥に光が見え、出口だと確信する二人。


「急ごう」


二人が出口に入ると其処は大きく広がった場所だった。


「ねぇカガヤ、まだ出口じゃないみたいだよ」


「うん、そうみたいだね」


二人の視線の先には更に通路が延びているが、その場所を守るように黒いモノが横たわっている。


「グルウルウルルウル」


黒いモノはこちらを確認すると立ち上がり、威嚇してくる。

見た目は巨大な狼のようで、額に光る宝石の様なモノが見える。


「あれ社巣魔しゃすま かな?」


「さぁだけど、歓迎はされてないね」


「グルウル、ガァアッァァァッァ!!!!!」


狼は二人に飛びかかってくる。


二人はとっさに左右に分かれその攻撃をかわす。


「先に進むためにはこいつをやっつけろって事かな?」


「たぶんそうね、ふん!!」


リリは答えながら武器で風を起こし、狼を吹き飛ばす。


ドゴン


狼は壁に叩き付けられるが、すぐに体制を整えリリに飛びかかる。


「大塚流!!燕子花 かきつばた!!」


カガヤは狼に横から攻撃をぶつける。


「ガァッァアッ!!」


例のごとく、いくら切りつけても傷はすぐに回復していく。


「やっぱり、角を見つけないと」


「もうみつけてるわよ、顎の下」


リリが言う通り、狼の顎の下に角が見える。


「よしアタシが切ってくるよ」


「私に任せなさい」


ムッとお互いにらみ合う。


「ガァァッァァァッァ!!」


狼は気にせず二人に突っ込んでくる。


「大塚流奥義!!椿 つばき!!」


カガヤは狼の両肩と額を一瞬で突き刺した。


「グアァッァァァッァ」


狼は上向きに叫ぶ。


「「今だ、破邪犬正はじゃけんしょう !!」」


二人は動じに叫び、狼に突っ込む。


「グアアッァァァッァ」


ガキン


二人の攻撃が狼の顎下の角を斬り咲いた。


「グギャァァッァアァッァ!!!」


断末魔を上げ狼が消えていく。


するとそこに不自然な棒が表れる。


「ふふん、アタシが早かったのよね?」


「残念だけど、早かったのは私よ」


二人は自分が早かったと主張する。


------------


「今度こそ出口か」


カガヤとリリはもう20分くらい歩き、出口に到着する。


するとそこには千星たちが待っていた。


「おぉカガヤ無事だったか」


「うん、千星たちも、どうしたの先に進まないの?」


千星達は奥を指さすと大きな扉があり先に進めないようだ。


「奥に行くには鍵がいるみたいだけど、うちらが倒した大きな犬が持ってるのでは足りないみたいなんだけど、カガヤ持ってない?」


吟はそういって棒を目の前に出す。


「あぁ私達も大きな狼を倒してこんな棒を見つけたよ」


カガヤは手に入れた棒を吟に渡した。


「ん~、コレでもまだダメみたい」


「じゃあの二人を待つしか無いのか」


「あらあたし達なら来てますわよ」


後ろから声が聞こえ、振り向くとセシルが立っていた。


「セシル、乃奈は?」


「あぁ頑張ってくれたから、いま休んでるわ、はいコレ」


セシルも同じような棒を吟に手渡した。


すると三本の棒は一つにまとまり、鍵に変化する。


ガチャ


吟が扉に鍵を突き刺すと、ゴゴゴと音を立て扉が開いた。


「よし先に進むよ」


千星がそう言って奥に進むが、セシルはその場に留まっている。


「ごめんなさい、私乃奈が起きてから追いかけるわ」


「そうじゃ私達も・・・」


「いえ、カガヤ急がないと、大丈夫すぐに追いかけるわ」


「・・・わかった、じゃ先に行くね」


そう言ってセシルと乃奈を残し五人は扉の奥に飛び込んでいった。


------------------------


五人は奥に進むと、また開けた場所に出た。

そこは競技ドームが一つ入りそうなほど広く、上も高い、その場に不自然に浮いた足場が何個もある。


「ここがゴールっぽいね」


「じゃどこに?」


五人が上を見ると一際光る足場が見える。


「あそこだ!」


そう言うとカガヤはいの一番に、一番近い足場にジャンプしている。

他の四人も同じようにカガヤに続く。


シュッ


「危ない!!」


ガキン


カガヤに飛んできた何かをリリが弾き飛ばす。


「油断しないでよね」


「ゆ、油断なんか!」


「二人とも上!!」


カガヤとリリの口論をテイラが止める。

そのまま近くの足場に降り立つ。


「よくここまで来ましたね」


声が上から聞こえる。

其処には艶美姫達が待ち構えていた。


「あんた達!露はどこ!?」


「ふふふ、あの男の子ならここの奥にいますわよ」


「もう観念しろ!拙者達が退治してくれる!!」


「ふん、貴様たちに何が出来る?」


艶美姫の横にいる剣万次足がえらそうに問いかける。


「巻物に載ってたんだ!お前達は私達八犬士には敵わない事を!さぁ観念しろ」


「八犬士?・・・はははっはは」


艶美姫達は楽しそうに笑う。


「あんたら何がおかしい!!」


テイラが怒りながら問いかける。


「お主ら、八犬士と言いながら五人しかおらぬではないか」


輪具僧の指摘はもっともだ。


「後から二人ちゃんと来るよ!」


「それでも、7人」


艶美姫の奥にいた小さな女の子にも言われる。


「は、あんたらなんて7人で上等なんだよ」


テイラは拳を突き出し言い切る。


「そうだよ、私達は社巣魔を何体も倒してきたんだ!あんた達も阻止してみせる!」


カガヤは艶美姫達に言い放つ。


「いいえ、それは無理よ、カガヤ」


「え?」


突然名前を言われ戸惑うカガヤ。


「だって・・・、八犬士はあなた達の所にはそろわないは」


艶美姫がそう言うと、艶美姫の服が緑色に変わっていく。


そうその姿はカガヤ達のよく知る姿だった。


「さぁ始めましょう、カガヤ」


其処には自分たちの仲間 生坂 セシル が立っていた。



後編へつづく。

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