第10話 「天空海闊」

「そう、あの子大分怯えてしまったの」

前回の事をセシルに説明するカガヤ達。

乃奈は旨く戦う事ができず、しかもそのあと自分たちから逃げでしてしまったのだ。

「うん、無事に家には帰ったんだけど、元気なくてね」

「わかったわ、私がまた声をかけてみるわ、それとカガヤ更に変身したって?」

「あ、うん『豪華犬爛|ごうかけんらん』って唱えたら更に姿が変わって、今までよりもすごい力が出たんだけど、あのあと唱えても変身できないんだよ」

「そう」

セシルは少しうつむき考え込んでいる。

「あれはなんだろうな?拙者も驚いたぞ」

「文献にもそんな事は書いていなかったですし、今はわからないでいいしょう、みなかえって休んでください。」

そういって解散を促すセシル。

「そういえば千星、明日は社会科見学ですってどこにいくの?」

「拙者は動物園らしい、街を離れてしまうので心配だがな、カガヤはドコだ?」

「アタシはTV局に行くよ、番組のお客さんとして見学できるって」

「そう、二人とも楽しんできてね」

そういって解散する。

しかしセシルはまたうつむき考え込んでいた。

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学校にバスが到着した。

今日は社会科見学でそれぞれの学年がそれぞれの場所に行くことになっている。

「私達付いてるよ❤TV見学なんてなかなかないよ。」

「だね、しかも歌番組なんて。」

「う~ん、あたし悠から借りたのしか聞かないからな。」

「もうカガヤは、行ったら楽しいから。」

アイドル好きの悠はカガヤを盛り上げようと声をかける。

「ふ、ふふーん、けどカガヤ今回は絶対行くべきだよ。」

エレナは自慢げに声をかける。

「え?なんであたしなの?」

「いいから、いいから」

それを聞いて悠も和歌もわかったのかなぁると顔を見合わせる。

カガヤは首をかしげながらバスに乗り込んでいく。

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「こんにちはみんなぁ、私達「ゴッデス」で~すぅ」

TV見学に来たカガヤ達は音楽番組を観覧している、そして登場した今回のゲストはアイドルグループ『ゴッデス』という五人組のようだ。

「じゃみんな一緒にしてください。」

「おぉあれですね今女子高生達の間で話題のあのポーズですね」

「はぁい、じゃご一緒に」

そうしてステージ上の人達や会場のわかっている人達がポーズをとって一斉に叫ぶ。

「デア!!」

「!?」

「みぃんなぁ~、ありがとう」

ゴッデスが手を振って喜んでいる。

「おや~、カガヤさんどうですか?」

エトラが意地悪に顔をのぞき込んでくる。

そう彼女たち「キュオーンデア」はカガヤが思いつきで名付けてしまったのだが、その名前は女子高生の間で『デアポーズ』が流行っており、それがギリシャ語だと言うことをエトラから聞いて名付けた物だったのだが、

「エトラ、これがあんたの言ってた事?」

「ふふ~、そうだよ、あのデアポーズはこの『ゴッデス』がやりだしたポーズなんだよ」

「へ~なんでそんなこと始めたの?」

和歌が不思議そうに会話に参加してくる。

「あぁそれはあの端に立っているポンパドール(髪型)の子『稲村いなむらリリ』ちゃんって名前なんだけど、あの子がギリシャ人とのクオーターらしいんだよ、それでギリシャ語でポーズ取ったらしいよ。」

悠は楽しげに語ってくる。

「さすがアイドルだね可愛い、けどそのギリシャクオーターの子なんか普通のアイドルらしくないんだけど。」

「あぁたしかにね、リリちゃんはは可愛い可愛いアイドルって感じじゃ無く、ツンな感じのクール系アイドルだからね」

「クール系って、それでもアイドルできるの?」

「人気はあるらしいよ、そういえばゴッデスが握手会をしてた時、リリちゃんが一番最初でファンと人と握手をしたら違和感があって、その人が次の文華ちゃんと握手を使用としたのを止めて『あなた手を洗ってきてないでしょ?他の子達が汚れるから洗いなさい』って怒ったらしいよ」

「それ大丈夫だったの?」

「なんか手を洗ったのを見て『私で良ければまた握手してあげるから、手を洗ってきてね』って相手もなっとくしたらしいよ」

「まぁそもそも手が汚いまま握手したその人に問題がありそうだね」

「たしかに、けどそんな人にちゃんと注意ができるってすごいよね」

カガヤも確かにと思いながらステージ上の『稲村リリ』を見直した、ポンパドールで上げた髪から編み込んだ髪が一つ右に止められ、目は大きくキリっとした瞳、背も高く170cmはありそうだ。

「そういえば、ネット上で「キュオーンデア」って言うヒーローの話が出たりしているけど、デアとデアポーズってなにか関係があるの?」

番組のMCが急にキュオーンデアの話を始めていた。

「えぇ~私達は関係ないですよぉ、言い始めたのも私達の方が早いのに、プンプンですよぉ」

「そうですよぉ、これは私達の物なのにぃ~」

ステージ上ではご立腹な意見をアイドル達が語っている、カガヤは申し訳ないなぁと肩をすくめる。

「リリちゃんはどう?このポーズもリリちゃんがギリシャ人のクオーターだからできたんでしょ」

MCは急にリリに話を振った、見た目や発言などから何を言われるんだろうとドキドキするカガヤ。

「ん~別に『デア』って言葉自体、ギリシャ語の『女神』って意味で、私達だけの言葉じゃ無いから別にいいんじゃない?」

他のアイドルみたいに子供っぽいしゃべり方もせずはっきりと言うリリの言葉に少しほっとしたカガヤ。

「よかったね、カガヤ。」

エトラが意地悪くニヤ~っと笑う。

「あんた、たのしいでしょう?」

エトラは大きく頷く。

「それじゃ、ゴッデス達に歌ってもらいましょう、曲名は・・・ん?」


ドゴン


大きな音がして建物が揺れる。

「な、なんだ」

会場が突然ざわつき始める。

「な、何が起きたんだろう」

「さぁわからない、んエトラ?」

音がした途端、エトラは携帯端末を起動して画面を見ている。

するとスタッフがステージにあがりMCと話を始める。

「えー皆さん、このビル問題が起きたらしいのです、危険は無いようですが念の為建物から避難して欲しいとの事です、危険はありませんのでゆっくりと移動をお願いします」

スッタフのアナウンスにしたがい『えー』と言いながら移動を始めるお客達。

「カガヤ!これ!」

移動しながらエトラがカガヤの肩に手をかけ、携帯端末の画面を見せる。

「ん?えこれはなに?」

画面にはカガヤ達が入ったビルが写っており、その上に白い布のような何かが乗っているのが見える。

「これ紫の布に見えるけど、端に付いてるヒモみたいなのが生き物みたいに動いて窓を割っているらしいんだけど」

「まさか社巣魔しゃすま?」

「わからないけど、こんな見た事もないものって」

「・・・みんな見えているって事はかなり強い奴かも、念の為アタシ屋上に行ってみるよ」

「解った、私達も抜け出すの手伝うよ」

エトラ達に手伝ってもらい、列から抜けるカガヤ。

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TV局内を移動するカガヤ、トイレなど変身する場所を探す。

「もう、なにこの訳の解らない作り、トイレどこ?」

人に見つからないように上に移動しながらトイレを探すカガヤ。

先ほどからドゴンと大きい音は何度もなっているだけに急がないといけない。

「あった、すいません誰かいますか?・・・よし中には誰も居ないな。」

トイレに入り、洗面台の上に鞄を置く。

「しまった鞄はエトラ達に預ければよかったなぁ、まぁここに置いておけばいいか」

カガヤは腕から神具を外し、首に付ける。

開権犬実かいごんけんじつ!!」

カガヤの姿がみるみるキュオーンデアに変化していく。

「よし!!屋上に急がないと!!」

そう言ってトイレを後にするカガヤ、すると一番奥のトイレの個室が静かに開いた。

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「おっし屋上!!」

屋上への階段が解らなかった為、渡り廊下から屋上に飛び上がったカガヤの目の前に紫色の大きな布が広がるがそれには大きな瞳が見える。

「やっぱり社巣魔しゃすまか!!出でよ武器」

カガヤは武器を出しビルに絡まる社巣魔しゃすまの触手を斬り咲いていく。

「ピビーーーー」

なんとも言えない悲鳴を上げ社巣魔がビルから離れる。

社巣魔しゃすまの体には角が二本確認できるが布の表と裏に一本つづ生えているのを確認できたが、

「こら逃げるなー!!」

社巣魔しゃすまはまさに布の様に簡単に空に浮かび上がっていく。

カガヤはそれを追いかけ飛び上がる。

「大塚流!!燕子花かきつばた!!」

社巣魔しゃすまの体を刀が切りつけるが刀の風圧なのか、綺麗によけられる。

ビルに無事に着地したカガヤは再び飛び上がるが、予想以上に上に上がった本体に届かない。

「こいつ、イライラするな!」

 

ビュッ


社巣魔しゃすまは体から伸びるヒモでカガヤに攻撃を仕掛けてくる、難なくよけたり刀で受けたりするが、相変わらず本体に届くことができない。

「じゃこのヒモを使って、おっ」

ヒモを使って上ろうと思ったが、カガヤが握ったとたん、ヒモが途中からちぎれ消えてしまう。

「これじゃじり貧だよ」

「へー本当にいたんだね。」

「え?」

振り返ると屋上の入り口から稲村リリが声をかけてくる。

「ちょっと何をしているの、速く逃げないと」

そういって屋上の入り口にリリごと逃げ込むカガヤ。

「いやあなたがトイレに忘れ物をしたから届けに来たのよ」

「え、トイレにいたの?」

「えぇ、独り言が聞こえたらからこっそり見ていたらあなたの姿が変わったから驚いたわ」

「なんで返事しなかったんです?」

「私これでもアイドルだから、追っかけとかだったりしたら困るのよ」

なるほどと、自分の行動に後悔するカガヤ。

「とにかく逃げて、あれは危ないモノだから」

「そうみたいね、けど見ていた感じあなたでは何もできないのでは?

痛いところを突かれる。

「仲間を呼びますから、あなたが怪我でもしたら大変でしょう?」

「お仲間ってすぐこないのでしょう?ならいいアイディアがあるわ、私がなんとかするから、その変身アイテムちょうだい」

「いやいや、これは私のですよ、そんな変身アイテムなんて、あ」

カガヤはリリが肩から下げる自分の鞄をみる。

「あなたがその気があるなら変身アイテムありますよ」

「そう、じゃ渡しなさい」

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「本当に変身しちゃった」

「ふ~ん、これでいいの?けど顔が丸見えじゃない、一応私アイドルだから見られたら困るんだけど」

「変身すると映像には映らないし、普通の人にも顔が解らなくなるらしいから大丈夫ですよ」

「そうならいいわ」

そう言って屋上へ出て行くリリ、焦っておいかけるカガヤ。



ヒビーーーーー!!


姿が見えた途端、奇声を上げる社巣魔しゃすま

「で、どうやって戦うの?」

「まず武器を出しましょう、いでよ武器と唱えてください。」

リリがいでよ武器と唱えると、棒のようなモノが現れる。

「これをどうしたらいいの?」

「武器はそれぞれ違いますからくわしくは」

「ふ~ん、そうまぁとりあえずふってみて」

すると武器が三つ叉に開き、間に緑色の板が現れる。

「なんか扇子みたいね、じゃ」

リリは思いっきり武器を社巣魔しゃすまに向かって振り上げた。


ビューーーーーー


すると風がおこり社巣魔しゃすまの触手を斬り咲き、体も少し斬り咲いた。

「うまくいいたね、これであいつを切り刻めばいいの?」

何の疑いも無く使いのなすリリに驚くカガヤ、だがすぐに説明を始める。

「いいえ、社巣魔しゃすまの体はすぐに再生するから、確実に倒すにはあの生えている角を斬り咲かないと」

「わかった!」

ふたたび振りかぶり角に向かって武器を振るリリ。

風は角に当たるが特にダメージはなさそうだ。

「ダメみたいね、ん?」

「ダメだよ、角は堅いから武器を強化しないといけないから『破邪犬正はじゃけんしょう』と唱えて斬り咲くんだけど、数秒しか強化できないからまずは近づかないと

だけど、これじゃ」

そう説明して上を見上げるカガヤ。

「ははは、困っているようね貴方たち」

上からした声の方を向くと、アイドルのような衣装を着た猫のマスク女が立っていた。

「あなたは、たしかにゃんにゃん仮面」

「うわ~覚えていてくれたんだうれっれしい」

アイドルのように手足を上げるにゃんにゃん仮面。

「だれ?あれ?」

「あぁ、にゃんにゃん仮面って言って前に助けてくれたんだけど」

「ふふ、イイ事教えてあげるわ、そこのオレンジのあなた、風を操る事ができるみたいだけど、たぶん自分も浮くことができるわよ」

「え、浮く」

「えぇ試しにやってみて、その扇子を少しでいいから振ってみて浮くイメージを浮かべてみて」

カガヤが振り向くとリリが少し浮いている。

「本当に浮いてる」

「よし、じゃ二人でやっつけてきて、私はこれで失礼するわね、じゃね」

そう言って向こう側に行ってしまうにゃんにゃん仮面。

「な、なんなんだろうあの人は?」

「本当にね、さぁあいつに近づくよ」

リリはそう言って手を伸ばしてくる、カガヤは頷き手をつかむ。

その瞬間カガヤの体も浮かび上がる。

そして二人で社巣魔しゃすまに向かっていく。

「あと注意事項は?」

「さっき確認したけどあいつには2本角があるから、どっちも片付けないといけないから、お互いが斬り咲かないと。」

「じゃあなたはあいつの背中に落とすから、そっちをお願い私はもう一つを斬るから」

了解と頷くカガヤ。


リリのおかげで近づく事ができたカガヤ。

「じゃそっちはお願いね」

そう言ってカガヤを社巣魔しゃすまの背中に落とし、リリは回転して腹の方に回り込む。

「えっとあれね」

カガヤを下ろした事により、さらにスピードを上げるリリ、触手攻撃も華麗によけていく。

「えっと、意識を込めて『破邪犬正はじゃけんしょう』だったよね」

リリがそう唱えると、武器が光り出す。

「これでいいのね、それ!」

リリの武器が社巣魔しゃすまの角を斬り咲いた。


社巣魔しゃすまの背中に着地したカガヤ、足を取られるが走れない事はない。

「よし!」

角に向かって走り出すカガヤ。

カガヤも触手攻撃を斬り咲きながら前に進み、角が見えてくる。

破邪犬正はじゃけんしょうぉぉ!!」

カガヤの武器が光りそのまま突っ込む。

「そうれ」

もう一本の社巣魔しゃすまの角が斬り咲かれる。


ギャァァッァァッァァッァ!!


社巣魔しゃすまの断末魔が響き消えていく。

足場が無くなり落下するがちゃんと屋上に着地するカガヤ。

「ふぅ、うまくいった、助かりましたありがとう!」

空からゆっくり降りてくるリリにお礼を言うカガヤ。

「・・・あなたね、無鉄砲が過ぎるわよ」

「ム、いきなりなんなのよ、というか逃げろと言われているのに屋上に来るなんて、あなたこそ危ないでしょう」

「あなたが屋上に行くのが見えたからね、あなた客席に居たでしょう?私ファンは大切にする主義なの」

「私ファンじゃありません!」

「あぁそうなの、まぁいいわ、これ楽しいからまた手を貸してあげるよ、これからもよろしくね」

そういって屋上の入り口に足を向けるリリ。

「そういえば名乗ってなかったね、私『稲村リリ』どうぞよろしく」

「ム、私『大塚カガヤ』って、変身の解き方教えますから、さっさと行かない。

二人の姿が入り口に消えていく。


第拾話 完

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