<結:寒桜と山桜の花弁に頬を撫でられる>

<再会と再生>

生田はため息をつく。息が白く暗闇に舞った。長く座っていたから、ベンチは人肌に温められていた。


酷い大人を演じ過ぎていたのかもしれない。ずるずる付き合い、恋愛を失敗に誘った。彼女を酷く傷付けたのは想像に難くない。


俺は恋愛とは名ばかりな自己満足をしただけだ。


彼女の告白の手紙を渡された時から恋は初めから終わっていた。なぜなら、初恋は失敗するべきだからだ。


俺は嫌という程、恋愛で苦労してきた。さくらの事は本当に好きだった。だからこそ、俺は……。


俺は視線を目の前の川に移し、缶コーヒーを一口飲んだ。冷たい。苦い。頬に涙が一筋流れた。


「俺は今でも大人になりきれない。俺がした事は彼女の為になっただろうか」


ただ確実なのは彼女が今年も学園祭に来たとしても俺はそこにはいないという事、きっと彼女は驚きながらも俺を忘れていく事。


ライトアップされた桜の葉が白くなり、季節外れの桜を見ているようだ。葉を散り損ねた桜が静かに揺れて微笑んでいた。


「これで良かったんだ。俺の事なんて忘れてしまえば」


俺は頬にグレーのマフラーを擦りつけて、秋風にそう呟いた。


「先輩を忘れる事はありません。私が学園祭に別れた後も来ていたのは―」


俺は聞き覚えのある声に、驚き、振り向く。


桃色のさくらが舞って、頬を撫でた。


「君は―」


さくらの香りがふわっと香った。

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嘘つき先輩はサクラを想う 千代田 白緋 @shirohi

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