(八)百鬼夜行の現はるる夜
きょう一日の戦いを思い返していると、急激に
「な、なんでもない」「なんでもなくはないでしょう。どうしたんですか、その大量の汗」
「あ、汗? どうしたんだろう? 夏だからね。……うっ」思わず声が漏れる。下のほうも漏れそう、マジで。「くふっ……!」
「おしっこ、ですか。それとも、う○こですか」やだ、この神使。ストレートすぎない?「
「か、神様だから。糞尿はしないのよ」「昭和のアイドルですか。生身の肉体を持っている限り、そうはいきませんよ」「いざとなったら、ここから……」
「中世のパリですかっ!」さらに時代を遡らないでください、と弥兵衛はツッコミを入れた。「中世の頃のパリでさえ、
「年頃の女性って……」その言い回しに、彩は思わず吹き出した。下からは吹き出さないよう、細心の注意を払いながら、鼻高々と胸を張る。「身体はそうであっても、羞恥心なんて
「なに偉そうにしてんですか!」弥兵衛はムッとして、意地悪っぽく反論してみた。「でも羞恥心がない割に、どこから食べ物を出したかについては、言いづらそうにしてましたけど~?」
「あ、あれはっ!」彩の蒼白していた顔面が、一気に紅潮していく。「その、嫌われたくなくて……稲穂がっ! そんなことで嫌ったりするような人じゃないのはわかってるんだけど! でも、過去のトラウマが……」
「はいはい、わかりました」なおも言い続けようとする彩に対し、弥兵衛は適当にあしらった。「ここから糞尿を垂れ流したら、それこそ間違いなく嫌われますよ?」
「うっ……」至極まっとうな正論を突きつけられ、彩は仕方なく、弥兵衛の言うところの厠へ行くこととした。「へいへい、トイレに行けばいいんでしょ。わかりましたよ」
仮設トイレくらい用意しとくんだった。稲穂の
「その代わり! ちょっとの異変でも見逃したら、ただじゃおかないから!」
捨て
その、少し彩が持ち場を離れた瞬間のことだった。まるで狙っていたかのように、その
三つ目の妖怪が「ここで間違いねえか? しょうけら」と確認し、しょうけらと呼ばれた真っ赤な舌を出した妖怪が「んだんだ、間違ぇねぇ」と頷く。着物の女性が「ちょっと誰!
「……なに、あれ。
久々に行列を連ねる妖怪たちを見て、弥兵衛は目を丸くした。首だけを出して様子を見守っていたが、その行列は、近所に住む見覚えのあるモノたちばかりで構成され、特に害を与えるつもりで訪れたわけでもなさそうだ。鬼の襲った家を見にきたのか、それとも
妖怪たちも少子高齢化のせいで、江戸時代に比べたら数が減りつつあった。前に、このような行列を見たのは、いつのころだったか。数百歳級の年寄りがいないところを見ると、自分たちの勝手な判断で、この場所にきたことは明白である。興味の尽きない年ごろなのかもしれない。首を引っ込めた弥兵衛は、
…………。
……。
人里離れた山の奥に、
「あの
「神様が……? わざわざ人間を守っているのですか?」片足の欠落した娘が驚嘆の声を上げた。「やっぱり、ただならぬ
牛車に最も近い鬼が、ブラウン管を持ち上げる。そこには、丸まって眠り
「あの家へ、もうひとつの
「ダメだダメだ」片足の欠損した鬼女の父上が
エコーのかかった五つ目の鬼の声が「そんな悠長に構えていたら好機を逃してしまう」と忠告してきた。それに対して鬼女の父上は「その好機を確実なものとするために、いまは辛抱が必要なのだ」と断言する。それから五つ目の鬼に向かって「動きがないか見張っておけ。くれぐれも見破られぬように……」と言い加えると、五つ目の鬼は気配を完全に消し、その場から立ち去っていったようだ。
「奴は
「わかっております。七日以内に脚をくっつけなければ……」目を
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アマテラスの力を継ぐ者 モンキー書房 @monkey_shoboh
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