第11話
精霊は、下働きの者達が自白したのを聞いて、即座に報復しようとしました。
その怒りは激しく、王城どころか王都まで地下深くに沈めかねませんでした。
ですが私が押しとどめました。
王城に務める者達だけが天罰を受けるのなら、私は止めなかったでしょう。
しかし王都の民まで巻き込むわけにはいきません。
王都の民全てが善男善女と言う訳ではありません。
中には悪辣非道な者もいるでしょう。
ですが大地母神様や精霊を敬う心優しい人がいるのも確かです。
それに、私には思惑がありました。
これを機会に、大地母神様や精霊への信心を強化するのです。
「王家は恐れ多くも大地の乙女様を罠に嵌めた。
最初は落とし穴を使って殺そうとした。
次には事もあろうに糞尿を投げかけ、汚辱に塗れさせてから殺そうとした。
よって、明日の昼に天罰が下ることになった。
皆よく見て教訓とするように!」
神殿から高札が立てられ、天罰が下ると宣言されました。
天罰が下るのは、王家を含め王城内にいる者全てです。
中には悪人と言い切れない人もいるでしょう。
ですが完全な善人もいないのです。
どこに境界線を設けるかは、精霊の判断にゆだねるしかないのです。
刻々と時間が過ぎていきます。
もちろん王城から逃げ出そうとする者はいます。
ですがそんな者は、精霊が張り巡らせた見えない壁に阻まれます。
城壁をよじ登った途端、中空に張り付けられるのです。
そして生きたまま、死なない程度に鳥に啄まれるのです
生きたまま、激痛に苛まれ、身体を喰われるのです。
それを集まった王都の民に見せるです。
完全な見せしめです。
私が断じて行った悪行です。
時が迫るにつれて、雷鳴が轟き、精霊の怒りが民を思い知らせます。
本当に精霊がいるという事を。
存在するだけではなく、怒りが民に下される厳然たる事実を。
王都の民は恐れおののいています。
時が至り、王城が砂になっていきます。
塔の先端から徐々に砂に変わっていきます。
人間は殺されず、流砂に飲まれていきます。
王や王妃、王太子や令嬢達が、流砂に溺れ苦しんでいます。
その姿が、天空に大写しとなります。
精霊は直ぐに殺したりしませんでした。
そこに大地母神様の御意志があるかは、私ごときには分かりません。
ですが、精霊の怒りの深さはだけは、私にも王都の民にも伝わりました。
それほど王城の者達が受けた苦痛は激しいモノでした。
衣服を剥ぎ取り、身体中の穴と言う穴から流砂が入り込み、激痛を与えています。
その痛みの激しさは、何故か伝わる悲鳴と天空に映る苦悶の表情で明らかです。
耳や目から血が流れています。
皮膚が削り取られ、肉が剥き出しになり、その肉も削られ、骨だけになって死んでいくのです。
おぞましい地獄絵図を見て、多くの民がその場で卒倒しました。
王家と多くの貴族士族が滅びました。
神殿の王家派は心を入れ替えると誓いましたが、精霊は許しませんでした。
王都の広場に晒され、何もないのに精霊の怒りで自然発火し、業火に焼かれる痛みの悶え苦しみながら死んでいきました。
王国は教国と名を変えました。
私が代表として国を治めることになりました。
大地乙女が虐められ婚約破棄されたので、精霊が激怒した。 克全 @dokatu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます