第28話被告アムンゼン 解説
「それでは、謎の腹痛によりスタジオから退出されましたガリレオさんに変わり、本編後の解説を務めさせていただくのは、わたしことアムンゼンと……」
「テイルなんですが……アムンゼンさん、寒くないんですか。このスタジオ、氷点下なんですよ。それなのにヘソ出しタンクトップにミニスカートだなんて」
「ぜんぜん。むしろ暑いくらいです。むしろテイル先生こそそんなに厚着しちゃってどうしたんですか。『暑さに耐え抜け、ザ・我慢』な大会でもやってるんですか」
「普通の日本人ならこの温度では、これが通常の格好です、アムンゼンさん。これで暑いと言うんでしたら、アムンゼンさんにとっての寒いってどんな状況なんですか。本編で『今日は寒いな』なんて言ってましたよね。犬ぞりのくだりで」
「バナナで釘が打てたら長袖着ようかな。車用の不凍液が凍ったらコート着ようかなって感じですかねえ」
「それ以上言わなくていいです、アムンゼンさん」
「そんなことよりも、テイル先生。わたし、テイル先生に確かめたいことがあるんです」
「な、なんですかね、アムンゼンさん」
「本編でのテイル先生はオムツ派とおっしゃってましたけど、本当のテイル先生はどうなんですか。いま、テイル先生はオムツを履いているんですか、いないんですか」
「そ、それは万が一の事態に備えて履いていますが……なにか問題ありますかね、アムンゼンさん」
「大ありです。もしかしてそのテイル先生が履いているオムツは最新科学の粋を結集した『おしっこを吸収して一滴も漏らしません』と言うやつですか」
「そ、そうですが……科学者としてはハイテクなものを使いたいなあと言うのが人情でして……」
「論外です、テイル先生。布おむつならギリギリセーフでしょう。しぼればおしっこ飲めますからね。ですが、漏れないオムツとは何事ですか。それじゃあおしっこ飲めないじゃありませんか。テイル先生の言う非常事態ってどんな事態なんですか。まさか、テイル先生ともあろうものが、飲料水が確保できない事態を想定していないだなんて言わせませんよ」
「も、申し訳ありません、アムンゼンさん」
「いいですか、基本は本編にもありましたが、ペットボトルです。だいたいテイル先生は男の子でしょう。男の子がペットボトルにおしっこ保存できなくてどうするんですか。体の構造上、男の子の方がおしっこをペットボトルに入れやすいはずなんですよ。女の子のわたしが本編ではおしっこをペットボトルに保存していたと言うのに」
「あ、あれってアムンゼンさんが本当に用をペットボトルでたしたものだったんですか。てっきり小道具かと思ってたんですが……」
「そんなインチキをわたしは認めません。細部に至るまで、本物にしてこそ真の映像作品と言えるんです」
「あのペットボトルを手に握るシーンがなくて良かった」
「なにか言いましたか、テイル先生」
「いえ、なにも」
「よろしい。ほかにもビニール袋という手があります。これは、おしっこを保存しない際は小さく折りたためるという利点が大きいですね。冒険においては、荷物のコンパクトさが重要ですからね。かといって、使用済みのものをゴミとしてポイ捨てなんて環境保全の点から論外ですし」
「なるほど」
「ただ、ビニール袋はおしっこが漏れやすいという欠点があるんですよね。出してすぐ飲む場合にはいいんですが……おしっこを保存した状態で持ち運ぶとなると……漏れにくさという点ではペットボトルのほうに軍配が上がりますかね。聞いてますか、テイル先生」
「聞いてます聞いてます」
「最近では、携帯用にレトルトパウチされたタイプのジュースもありますね」
「ああ、あの、ゼリー飲料に使われているタイプの入れ物ですか。凍らせてシャーベットにしたものを手で揉んだら飲みやすくなるから便利なんですよねえ。これはペットボトルにはないメリットですね。これはいいんじゃないですか、アムンゼンさん。おしっこを入れてないときは小さくたためますし」
「ただ、問題があります」
「なんですか」
「飲み口が小さくておしっこを入れづらいということです。ろうと状のものを飲み口に差し込んでからおしっこをそそぎ入れるという方法もありますが、その場合は、余分な荷物が増えることになりまして、やはり冒険には不向きです」
「ほうほう」
「あれ、テイル先生。わたしが説明するまでこの問題点に気がつかなかったようですが……」
「それがどうかしましたか、アムンゼンさん」
「あのレトルトパウチケースの飲み口って、相当小さかったと思うんですけれども……それにテイル先生は問題なくおしっこを入れられるということですか。ということはテイル先生って……」
「寒いからです! 寒いと男性はそうなるんです! すべてこの寒さのせいなんです。寒いから判断力が鈍ってしまった結果、そこまで考えが回らなかったんです」
異世界魔女裁判ガリレオ @rakugohanakosan
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