ねこやしき×ラブコメ胡桃と暁月優利《本編X》
暁月優利はゲームが大好きである。物心ついた時から……というわけではない。小学校でシステム構築学なる基礎の基礎に触れて、中学ではゲーム理論に夢中になり、高校生ではアプリゲームやロボット学に夢中になり。
ゲームを遊ぶより、ゲームの内部が好き、と言えばいいだろうか。
つまりはこう。
ガチャのピックアップが本当か、その配分は合っているか
バトルパラメータの数値の乗算はおかしくないか。
このゲームの画素数は低すぎないか……。
「それ、総じてヲタって言うんだよ、ヒロ」
彼女の胡桃に意気揚々と語ったところで、一蹴されてしまった。そうか、ヲタクか、なるほど、生粋のゲーヲタってことかと納得したものである。
さて、その胡桃だが、こちらはこちらで、暁月優利に似ている男の子を落とす恋愛SLGからゲームの道に入ったところ、嵌ってしまった。
ゲームの沼は底なしである。(まさか優利には言えないよね)ということで、未だに黙っているが、実はこの恋愛SLGはちょっとばかりR18要素があり、しっかりちゃっかり「お勉強」をしてしまったわけである。
唯一の心配は、「暁月優利をそっちのけにしないか」だったが、ちゃんと暁月優利といるとドキドキするし、どちらかというと、現実なのに、暁月優利との恋はVR化したように、幻想的に感じることが多い。
このゲームはさておき、このままドツボに嵌まるのも嫌なので、他のゲームを探すことにした。
「おまえ、猫が好きだろ。ねこやしきがいいんじゃないか?」
暁月優利が勧めてくれたのは町中をヒントを頼りに探索するMAP型RPGシミュレーションの「ねこやしき」である。主人公は奉行所の下っ端で、色々な事件が起こる「にゃん江戸」の解決に奔走する。しかし、キャラ猫も同時に集めなければ進まない。今は一番犯人を知っていそうな「若旦那ネコ」を探しに花魁界隈までやって来て……。
「ヒロー、進めなくなった」
本当は分かっているけど、進めない振りをすると、ヒロは嬉しそうに教えてくれる。面倒なんかじゃない。一緒にいられて、ゲームをしているうちに、違うゲームが始まるかも知れないでしょ?
胡桃は暁月優利が好きだ。
そこに、理由なんか見当たらない。出逢った時に、やっと会えた、と思ったが、暁月優利には「秘密」は通じなかった。どうあっても、暁月優利のことは見えないから、だからこうやって視える日が来るまで、いっぱい知らなきゃいけないのだと思う。
「……ちょっと待って。俺、会社の書類仕上げないと」
会社員らしいことを言っているが、暁月優利の仕事は特殊な部類に入る。
VRMMOの奥深さ、罪深さ、ゲームに隠された闇、そういうものを肌で感じるのではなく、脳で感じ、挑んでいく。
キャッスルフロンティアKK、シーサイト所属 暁月優利。
彼氏としての肩書、悪くない。
キー音が心地いい暁月優利の部屋で、胡桃は小さく深呼吸をした。お泊りでも、きっと私たちのフラグは立たない。
「おまえ、それで俺の部屋まで来たわけ?」
「うん、逢いたかったから。やっとイベントできるんだもん。復刻嬉しくて!素材いーっぱい獲るんだ!」
「徹夜だぞ?」
「どんとこいだい。――門奈さんたち、元気かな」
「元気だよ」
幼馴染のあたしの頭。もっともっと撫でてみて。ぴょこんと甘えたな猫耳が見えてくるかも知れないよ?
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――FAありがとうございました。のお礼の別編です。本編のすぐあとに当たります。胡桃は「門奈さんたち元気かな」と言っていますね。そして二人はVRMMOから現実に戻っています。
この続きは「第二部」で。整合性を求めるシナリオVRMMOゲーム感覚でお読みください。
FAはTwitterで見られます。可愛い胡桃がお出迎えしています。
いすみ静江さま、ありがとうございました。
ヴァーチュアス・ゴドレス〜きみの生命は僕が死守する〜 天秤アリエス @Drimica
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