第6話ちょっと早起き

「〜くん」「ルくん〜」「起きてる?」と囁き声が聞こえた気がした。夢の中だろうか?だが夢を見るときは決まって起きる直前に近い証拠でもあることを聞いたことがある気がする。アラームはまだ鳴っていないし起きる必要もないよな、そんなことを考えると、少しだけ右腕に重みが乗っかってきた。少し目を開けて、右腕の重みのある方をみれば紗耶香が目をつぶって頭と腕を組んで、僕の右腕の上で寝ているようだった。ほら、よくアニメや漫画の主人公が病気や怪我をした後にベットの上で目を覚ますとヒロインが傍に座って自分の腕の上で寝ているシーンがあるだろう。とにかく今そんな感じなんだ、別に病人でもなければ怪我だってしていないし、まあ紗耶香がいるってことはそろそろ起きる時間に近いんだろうから起きようかな。左手を支えにして紗耶香が起きないように気をつけながらゆっくりと腰と頭をベットから離し、ベットの脇に置いてある時計に目を向けて今の時間を確認すると6時25分だ。いつも6時半ちょうどにアラームをかけているから5分早く起きたことになる。だけど紗耶香はときどきこうして早く来ては今のように寝ていることがある。いつもは決まって6時半に目を覚まして起きてから、一階に降りてリビングに行くと紗耶香は朝ごはんを作ってくれている。だから、僕より毎日早起きをして準備をしてくれている紗耶香に感謝でいっぱいな気持ちがあるんだ。そんなわけで、感謝な気持ちを込めつつそばで寝ている紗耶香の頭を僕の余った左腕で撫でてあげると、嬉しさで一杯なのか微笑みが返ってきてすやすやと寝ている。先にアラームがなる前にアラームを切っておこう、そう思い僕はアラームに手をかけてセットしていたアラームを切ると、ちょうど紗耶香が目を覚ます。多分頭を撫でたときに少し覚醒したのだろう、「おはよう紗耶香」と僕が声をかけた。そうすると、まだ少し眠たそうな顔と声で「おはよう〜ハルくん、ふぁーあ」と小さくあくびをしながらそう返してくる。紗耶香は体を起こして、立ち上がって着ている制服のスカートのシワを少し叩いて伸ばしながら「先に下行ってるね、ふぁー」とあくびを垂らしながら僕の部屋から出て行く。それから僕も寝巻きから制服に着替えてから下に行き、キッチンで紗耶香が先に朝ご飯の準備をしているところに自分も加わって準備を手伝った。今日の朝ごはんはトーストと紗耶香が作った昨日の残ったカレーとベーコンと目玉焼きだ、カレーにパンをつけて食べたり、ベーコンと目玉焼きをおかずにして食べるメニューだ。紗耶香はすでに昨日の残ったカレーの鍋をコンロで温めていたようなので、僕がトースターの前で自分で入れたコーヒーを飲みながら紗耶香と僕の分のトーストが焦げないように見張りながらトーストを焼いていた。それとカレーの鍋が暖まったのか、紗耶香はフライパンを出して卵とベーコンをそれぞれ焼く。そうして少し経つとこっちのトーストも焼けたようなので、焼けたトーストをトースターから出して皿の上にのっけてテーブルの上に置く。次に僕は紗耶香がフライパンで焼いている横でカレーを二つの皿によそってスプーンと箸を持ってテーブルに置いた。さらに、二つのコップにお茶を注いでテーブルに持っていってから、座って注いだお茶を飲みながら紗耶香が来るのを待つ。しばらくすると焼き終わった目玉焼きとベーコンをのせた皿を持ってきて紗耶香も僕の目の前に座った。「それじゃあ、ハルくん、食べようか」と紗耶香が言ったのを合図に、僕たちは「いただきます」と自然と揃って手を合わせて食べ始める。うん、美味しい。もぐもぐと食べていると、「ハルくん、今日図書委員の係あったっけ?」と紗耶香が聞いてきたので僕は食べているものを咀嚼してから飲み込んで「いいや、今日は特にないよ」「そっか」と会話を挟みながら朝食をとっていく。まず、僕たちは学校の係りで図書委員会を務めている。主な役割は放課後図書室のカウンターに座って貸し出しと返却、それと返却された本を元あった本棚に戻す作業だ。そして今日は金曜日だから今日は僕たちの当番ではないがたまに他の人の都合で抜けたりすると頼まれたりするのだ。つまり今日は特に頼まれなければフリーの日であるということで放課後はまっすぐと家に帰ってだらだらと家で過ごす予定だ。そんなこんな朝の時間を過ごしていると、時刻は午前7時50分でそろそろ最終支度をして出る頃の時間になってきた。というのもいつもこのくらいの時間に準備をして学校に向かうのだ。大体歩いて家から学校まで20分くらいの道のりなので、HRが8時30分からなのでいい感じに学校に着くわけだ。「紗耶香、そろそろ出ようか」「うん、わかった〜いま、皿片付けてから準備するから先に玄関出ていいよ」と紗耶香の声がキッチンの方からする。

僕は椅子から立ち上がってカバンを持って玄関へと向かう。玄関に行くといつも通り紗耶香の履いているスニーカーと僕の履いているスニーカーがかかとを揃えて置かれている。それ以外は靴は出ていなくてとてもわかりやすい。僕は靴を履いて靴紐を結びバックを背負って立ち上がる。そのまま玄関を出て外で待っていると、しばらくしてから玄関の扉が開いた。「お待たせ、ハルくん」そう言いながら紗耶香は玄関の鍵を閉める。一応紗耶香は自由に出入りできるように合鍵を母さんから渡されている。そうでないとそもそも僕がいちいち出て行かなきゃならなくて面倒になるだろうし、それと紗耶香が気兼ねなく入って家事をしてくれるから、僕としては紗耶香に頭が上がらないんだ。家の戸締りを確認した僕は「それじゃ行こうか」そう言ってから僕たちはいつも通り仲良く並んで家から歩き出した。

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階段のせせらぎ ゆー @yuu2000

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