第27話
といった全く同じ攻防が十回ほど繰り返された後、ドラゴンが地響きとともに地に倒れこんで動かなくなった。
「ふう、やったわ」
「それはよかったけど……。なんでドラゴンは、こっちに突っこんでくるなり逃げるなりしないで、同じことを繰り返したんだろう?」
「それはドラゴンって、頭がとっても悪いんですよ」
「そうなのか」
「そうです。なにかやると、ずっと同じことを繰り返すという習性があるんです。頭が悪いから」
「そうか。とにかく助かった。ありがとう」
「いえいえ、元はといえばこんなことになったのは、私が道を消し忘れたからです。ごめんなさい」
ミミの目は少しうるんでいた。
もう可愛すぎる。
俺は思わず抱きしめそうになったが、その前にミミが歩き出した。
「とにかく道を探しませんと」
やがて道は見つかり、俺たちはアパートへ帰った。
ミミが道を消して今回はそれで終わり。
その後一ヶ月ほど特に何事もなく過ぎたが、ある日アパートに帰り玄関を開けると、そこに五、六歳くらいの見知らぬ幼女がいた。
その頭に黒くてつばの広い円錐形の帽子を被っている女の子が。
「あっ、来てはだめです!」
奥でミミが叫んだが、遅かった。
空間が歪み、そしてどこかに飛ばされたのがわかった。
そこは真っ暗な闇だった。
なにも見えない。
「おい、ミミ。また道を消し忘れたのか」
「そうなんです。ごめんなさい」
「で、さっきの女の子は誰なんだ?」
「それは説明すると長い話で……」
俺は大きく息を吸い込むと、叫んだ。
「ここはいったいどこなんだあ!」
終
魔女はいかがですか ツヨシ @kunkunkonkon
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