第4話

目がさめると車の中だった。

ぼぅとした意識の中周りを見やると

右隣にあの男が座っていた。



「目が覚めた?」

その男は言った。

どのくらい経ったんだろう。

車窓から見える景色は

先ほどとは変わっていた。

みると郊外の住宅地といったところか。

さっき気を失ったのはこの人のせいなんだろう。私のことを知っていると言っていた。



「あなた何者なの?」

「これだよ」

そういうと彼は襟の裏側をめくって見せた

そこには獅子のような刺繍がある。


「なにそれ?」

「え?知らない?そうか、なにも知らないのは無理ないな。これだよ。」

というとロディは革の手帳を見せた。

「え?警察?警察なの?」

「まぁ、正確には元なんだけど。今はある事件を個人的に追ってるんだ。それが君にも関係してる。」

どういうことか分からないという顔でロディをみる。


「それを話すにはまず君の素性を明らかにしないとね。君、さっきドアをすり抜けていたね?」

「え、見てたの?」

そう答えてからはっとした。

あぶりだしかもしれないのに。


「隠さなくても大丈夫だよ。君は魔法が使えるんだ。」

「え?魔法?」

予想の遥か斜め上の話に反応出来ずにいるとロディはお構いなしに続けた。

「君だけじゃない。君がいた場所にいる人はみんなそうだ。何か不思議に思ったことはない?」

「い、いや、全く。」

たしかに思い通りに身体が動いたのもドアをすり抜けたのも、それなら説明がつく。

いや、でも、そんな、まさか。


「まだあんまり信じてないな。」

「え、ええ、まぁ。」

「でも事実。君は魔法が使える。そして君がいた場所はそれを管理してる。本人達には知らせずにね。」

「なんのために?」

「なんでだと思う?」

「質問で返さないで下さい。」

「はは、家に着くまでにはまだ時間があるよ。」


考えを促されて、思い浮かべてみた。


世間から離れた場所だとは思っていたが

まさか魔法が関係しているなんて。

そんなこと考えもしなかった。



「--魔法が使える人がいたら危険だから?」

「なるほど。残念だけど違うな。もっと欲深い理由さ。」


欲深い?なんだろう?

「--魔法を独り占めするため?」

「いいね。まぁそんな可愛いものじゃないけど。」

「早く教えて下さい。」

「まぁいいや。魔法石をみたことない?赤や黄色に光ってる石だよ。」


----光る石。

わたしはそれらしきものを見たことがあった。ずいぶん昔だったけど。

まだあそこにいて日も浅いときだ。

地下の青白い部屋に入れられて

クラス分けをされた。

その時は椅子に座っていただけだが

なにかを測っていたのだろうか。

扉の向こうに光る石が見えた。


「おそらく、見たことあると思います。」

「それを作っているんだよ。あれは魔力の塊なんだ。」

「作る?」

「そう。あれを持てば大きな力を手に入れられる。でもそれと同様、作るためにも大きな力がいる。」

「それって、」

なんだか嫌な予感がしてロディから目が離せない。



「うん、察しの通り。


君たちはその材料なんだよ。」

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