第3話

一台のタクシーが止まってドアを開けてくれた。「え?見えてるんですか?」と思わず尋ねると運転手は気味が悪いといった表情でドアを閉めてそのまま発車してしまった。その後何台か同じようなことを繰り返していくうちに「死んだわけじゃなさそうだな・・・。」と結論づけた。


でも、じゃあ、なぜ?あれは普通なの?

なにがなんだか分からない。


頭をかかえていると目の前に車が止まった。

「あ、わたし乗らないので、すいません。」

と言うと、運転席から20代くらいの若い男が降りてきた。

『なんだ私のために止まったんじゃないんだ』と恥ずかしく思っていると、その男は私の前に立ちはだかった。

「え?」と見上げると切長の目が特徴的な整った顔がそこにあった。


「こっち、一緒にきて。」

そう言うと私の右手を、掴もうとした。


『やばい----追っ手か!!』

私は即座に背もたれを飛び越えて男とは反対側へ走り出した。


「待って!」と男は追ってくる。

私は知らない道をとりあえず人の多い方へと走った。が、すぐに腕を掴まれてしまった。

「離して!」と腕を振り払うがびくともしない。

「待って、話を聞いて、大丈夫だから。」

と男はなだめるように言った。


私は最大限警戒したまま、体は逃げる体制のまま目だけをやった。

そんな私の様子をみて、男は話を始めた。

「驚かせて悪かった、俺はロディ。君のことは分かっている、助けにきたんだ。」

私はまるで信用してませんと言うふうに

「なんですか?」と尋ねた。


「ここでは話せない、だろ?

場所を変えよう。」

「いやです、離して下さい。」

「話を聞いて、ここにいてはまずい。

いずれすぐに見つかってしまう。」

「見つかる?なんの話?」

「とぼけても無駄。時間が無いんだ。」

そういうと男は私の右手首をなぞった。

「っー、!なにすんの!」

「これが何か知ってる?」

「え?」

よく見ると液体が塗られた右手首には

黒く焦げた呪文のような後が残っていた。

「なに、これ?」

「詳しくはあとだ、とりあえず来て。これをとらなくちゃ。」

「・・・・・」

じっと目を見つめる、たしかに嘘はついてなさそうだが、早々に信用できるものではない。やはりここは隙をみて逃げるか。

そう踏み出そうとすると、

「はぁ。まだ信用できないか。まぁそうだな仕方ない。時間がないから悪く思わないでね。」

「-----え?」

そう言うと目の前に光が飛んでそこで意識が途絶えた。

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