第2話
次の日アンナと私は昨日のことには触れず
授業に出ていた。
いつもの席で隣どうし。
教壇では若い女の人が一方通行の論理を唱えている。その人は薄いピンクの髪がウェーブしていて化粧はいつもばっちりだった。
それ事以外は名前も何も知らなかったから
私はピンクと自分の中だけで呼んでいた。
彼女は優しい口調で常に笑顔であったが
それが嘘だということはすぐに感じ取れた。
内容は頭に入っていないが、全員背筋をのばし前を向いて聞いているふりをしている。
中盤にさしかかった頃、なにか黄色い液体の入ったビンをピンクは取り出した。
「では、皆さん右手を出して下さい。」
訳が分からなかったが、この教室ではピンクがルール、みんな何も言わず右手を出した。
私も何が始まるのか不安に思いながらも
右手を出すと、そこに黄色い液体をハケで塗られた。
3秒ほどすると電気が走るような感覚の後、軽い火傷の様な痛みが走った。
周りを見るとみんな平気そうな顔をしていて、痛みは感じていないようだった。
『っ、隠さなきゃ。』
そうとっさに判断して私は右手首を握った。
「い、痛いっ、、アンナ、」
「え、?ソフィア!?」
左隣のソフィアが右手を押さえて苦しんでいた。私は驚いてすぐに自分の袖口で彼女の右手を拭いてやったが痛みは治らないようだった。
はっとして、ピンクをみると目を見開いて口元が笑っていた。
まずい、このままだとソフィアが危ない。
ピンクの髪を靡かせて、ヒールの音が近づいてくる。
「痛いの?楽にしてあげましょう。」
彼女はそう言って教壇から何かを取り出そうとしていた。銃だった。
そこからのことはもう無意識で自分でもこんなことをしたのかと驚くのだけど、私は教壇に向かって突進すると、銃を奪った。
彼女は驚いたのと同時に激怒して私に向かってきた。私は気がつくと銃を向かってくる彼女に放っていた。
パァン!と乾いた音がしたあと薄いピンク色が視界から消えて代わりに教室が沸き立つ様子が見れた。
私は窓に向かって走るとそのままガラスを割って外へ飛び出した。
飛び出す前、ちらっと見えたソフィアはもう踞ってはいなかった。
飛びだしてから気がついたが、
ここはまぁまぁの高さだったらしい。
幸い、隣の屋根に着地出来、そこからは
屋根伝いに逃げていった。
『わたしこんなに
運動神経よかったんだ!?』
今まで運動らしいことはしてこなかったから分からなかったが、イメージ通りに身体が動くらしい。
追っ手が来ないか振り返って分かったが、私がいた場所の外観は、校舎というより巨大な廃墟のという言葉が似合った。
それからどれくらい逃げただろう。
途中いくつも川を越えて、
私は人生で初めて"街"という場所に出た。
石畳の道を人や車が絶え間なく来ては過ぎていく様子に、私はとりあえずその場に溶け込む様に歩いていた。
どこかに追っ手がいるかもしれない、
そんな恐怖から少しの視線も気になった。
しばらくすると雨がぱらついてきた。
どこかで雨宿り出来ないか探していると
ひときわ賑わっているお店を見つけた。
おそらくキャンディショップ。
お店に入ろうと近づくと
そのままドアを通り抜けた。
そう、文字通りそのまま、通り抜けたのだ。
「え?」
突然のことで驚いて振り返ったが
なんの変哲も無い木とガラスで出来たドアが
あるのみ。
『え?どういうこと?いま私ドア開けてないよね?そのまま通り抜けたよね?』
混乱していると同じようにドアを通り抜けてくる人3人組が。よく見るとさっきぶつかりかけて、ごめんねと言われた10代半ばの3人組だった。
呆然と見ているとそのうちの一人が
「あれ?あなたもなの?こっちおいでよ」
と私を店の奥に案内する。
彼女はなんだか仲間を見つけたような
親近感のある笑顔で近づいてきた。
「い、いや、大丈夫です。」
私はやんわり断るとそのまま、また同じように外に出た。
『一体、今のはなんだったの?
あなたもってどういうこと?』
混乱したまま雨の中を歩き、タクシー乗り場についた。ちょうど待合場所には屋根があって好都合だった。
私は色々考えた結果ひとつの仮説に辿りつく。
「え、わたし、死んでる?」
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