Are you a Wizard?
@maiiiii
第1話
みんなもふと、自分が本当に"自分"なのか
分からなくなったことはないだろうか。
私は気がついたらここにいて、
自分がどこから来て何故ここいるのか
"自分"は誰なのか、不安に思っていた。
それがある事件をきっかけに
"自分"の秘密を知ることになる
ここは学校というには閉鎖的で
窓から外の景色は見えても、外へ
出ることは禁じられていた。
正しく言うと、
誰かに禁止されたわけではないし
出ようと思えば出られるはずだが
私も周りもそうはしなかった。
ここでの経験から本能的にそうすれば
咎められると感じていたからだ。
私は過去の記憶がなく、
気がついた時にはここで生活をしていた。
私にとっては"ここ"が全てであった。
その事を気にする人もいなかったし
互いに"ここ"にいることは何か訳があると
暗黙の了解で詮索もしなかった。
そんな私にもひとり、
ソフィアという友人がいた。
彼女は暗い栗色の長い髪が印象的な
優しい子だった。
私も彼女もここでの生活は長い。
互いに少しずつこの場所に疑問を
持っていることは感じたが
言葉にはしなかった。
今日も一日が終わるというときに
ソフィアが私の部屋にやってきた。
部屋というにはベッドが一つと
サイドテーブルがあるのみの殺風景な部屋。
生徒は一人部屋が与えられ、他の部屋に行くことは同じく禁じられていた。
私は驚いたが、見つかってはまずいと
とりあえず部屋に入るよう促した。
「どうしたの?ソフィア。
見つかったらまずいよ。」
「アンナ・・・。」
ソフィアは混乱した顔で
今にも泣きだしそうだった。
「どうしたの?何かあったの?」
背中をさすり、
なるべく声をひそめて尋ねた。
「ねぇ、アンナ・・。
どうして、私たちはここにいるの?」
私は言葉を失った。
それは今まで感じていた違和感
でも言葉にすると戻れ無くなる気がして
ずっと避けていたもの。
「どうして?」
私の口からはそう溢れた。
どうしてそんな聞くの?
それを聞いてどうするの?
そんな思いが混じっていた。
「私、ここで死にたくない」
彼女はそう言って、私を見つめた。
ソフィアは何かに気がついたんだ。
そう私は直感した。
彼女は深呼吸してから声をひそめて続けた。
「アンナは
ここにいることは嫌じゃないの?」
「わたし・・・?」
ソフィアの目はまっすぐで、それにつられるように私も自分の感情が溢れてきた。
わたしだって、ここにいることは好きじゃない。毎日洗脳まがいの授業に、自由のない生活。自分の意見を言ったこともない。友人と話すことも常に周りに気を配って、今だって隠れながら話している。わたしだって自由になりたい。外に出たい。
「わたしも・・・同じだよ。
ここで死にたくない。」
自分の意見を初めて言った。
その恐怖と高揚に声は震えていた。
「アンナ・・・。一緒に逃げよう」
私は一瞬、息が止まった。
ついにそれを言ってしまった、と。
すぐには返事が出来なくて、
「とりあえず今日は寝よう。」と言った。
きっとわたしは怖かったのだと思う。
ソフィアは納得したのか分からないが
このままここにいることは危険と思ったのか
「わかった。慎重にしなきゃだもんね。」
と彼女は自分の部屋に戻っていった。
わたしはそのあとも心臓がばくばくと煩く
なかなか寝付くことが出来なかった。
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