その4 探偵は事件を解決する〜キノコよ永遠に〜


「…………犯人が、分かったかも知れません」


 そう言った私に、全員が注目する。


「二宮さん、カーディガンをいでいただけますか?」

「……っ!」

「犯人でないなら、脱いでいただけますよね」

「…………」

「二宮様……」


 深い溜息ためいきの後、二宮はカーディガンを脱いだ。

 そこには、返り血が残されていた。


「どうして私だと?」

「いや、四之山さんと二択でしたけどね? カーディガンを着てきた貴方あなたの方があやしかっただけで。あとは、貴方が真っ先にドアノブに触れたのは、かぎが本当にかかっているかの確認をするためだったんじゃないかと」

「…………」

「貴方と一木さんは、かなり親しい間柄あいだがらだったのではないですか? だから一木さんは貴方にされても声を出さなかった。貴方が返り血を隠して私たちの前に姿を見せ、アリバイを作るであろう間、彼は扉の鍵を閉めた。そして最後の力を振りしぼって悲鳴ひめいを上げたんだ」

「…………」

「一木さんの誤算ごさんは、全員にアリバイが出来てしまったところですね。せめて窓の鍵さえ開けておけば外部犯の可能性も捨てきれなかったのに」

「…………うっ……うう……あの人が……あの人がいけないのよ……」


 それから到着した警察に二宮さんを引き渡し、私たちは下山した。

 小さく新聞にった事件の動機は痴情ちじょうのもつれとしか書いていなかったけれど、きっと色々とあるのだろう。

 何があろうと、殺人は悪だけれど。

 

 私は新聞をたたみ、次なるキノコを求めてネットの海へと潜った。


 次は殺人事件の起きない場所がいい。

 そう、思いながら。

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キノコペンション殺人事件 南雲 皋 @nagumo-satsuki

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