Vol.3|膨らませたアイデアを物語にまとめよう

 前回は、アイデアの種から問いに従い、想像を膨らませるというステップを行いました。今回は、前回出したアイデアをもとに作品を完成させるという、最後のステップです。


 「どのような物語にまとめればいいですか?」という質問に対してのぼくからのお返事は「ぜひ好きなように、自由に書いてください」ということです。出てきたアイデアをシンプルにつなげるだけでも構いませんし、さらに膨らませていっても構いません。

 もしかすると、中にはショートショートの定義が気になってきて、「これはショートショートではないのでは?」と不安に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、細かいことは一切気にせず、まずは作品を完成させることを第一に挑戦してみてください。


 そのうえで、強いてアドバイスをさせていただくならば、執筆に移る前にあらかじめ設定やプロットを考えてみるのもオススメです。具体的には、


・主人公は?

 ・ほかの登場人物は?

 ・いつ、どこでの話か?


 などの簡単な設定を考えつつ、「それから?」「それから?」と自分に問いかけ、冒頭から結末までのプロットを書いてみます。(もちろん、プロの中にもプロットなしで書く作家さんも多くいらっしゃいますので、このあたりはご自身のタイプによって柔軟に進めてみてください。)

 一例として、前回の「泡が立つお賽銭」のアイデアをもとにして、その設定とプロットを書いてみましょう。


◆設定

・主人公は?

 ⇒神主

・ほかの登場人物は?

 ⇒参拝者、女子高生

 ・いつ、どこでの話か?

  ⇒神主が参拝客を増やしたいと願いをかけた日を境に、さびれた神社にて


 ◆プロット

 ・あるさびれた神社。神主が、参拝者が増えないものかと悩んだ末に、お賽銭を自ら入れて神様に願掛けを行う。

 ⇒それから?

・その日を境に不思議なことが起こりはじめる。参拝者が賽銭箱にお賽銭を投げ入れると、シャボン玉が出てくるようになった。

⇒それから?

 ・そのシャボン玉には、お賽銭を入れた参拝者の未来が映る。

⇒それから?

 ・噂が広がり、たくさんの人が神社にやってくるようになる。神社は大盛況。

 ⇒それから?

 ・人々の生み出したシャボン玉で、境内は虹色の様相。幻想的な光景に、女子高生もインスタ映えを狙ってやってくる。

⇒それから?

・神社はシャボン神社と呼ばれはじめる。

⇒それから?

・お賽銭の金額が大きいと、より予言の精度も上がることが分かり、お札を束で投げ入れるような人も出はじめる。神主は顔をほくほくさせる。

⇒それから?

 ・神主は、集まったお賽銭を回収しようとする。

 ⇒それから?

しかし……。


 以上をもとに書いてみたサンプルが、こちらです。ご笑覧を。

=========

「シャボン神社」


 ある地方のさびれた神社では、どうしたら参拝者が増えてくれるかと、神主が頭を悩ませていた。こうなったら神頼みだ。そう思い、あるとき彼はお賽銭を自ら賽銭箱に入れ、神様に向かって願いをかけた。

 ──どうか、多くの人が足を運んでくれますように。

 と、拝み終わり、目を開いたときだった。神主は、おや、と首を傾げた。どういうわけか賽銭箱からシャボン玉がひとつ立ち上ぼってきて、目の前でパチンと弾けたのだ。そして、その一瞬のうちに、神主ははっきりと目にしていた。シャボン玉の表面に映る、自分の神社が多くの人で賑わっている光景を。

 ──これは未来を示す神様のお告げに違いない!

神主は大いに興奮し、期待に胸を膨らませた。

そして、現実はシャボン玉で見た通りのものになっていく。

きっかけは、たまたま訪れた参拝者が神主と同じような体験をしたことだった。すなわち、お賽銭を投げ入れたあとにシャボン玉が賽銭箱から飛びだしてきて、そこに未来の自分の姿を見たのである。

 出てきたシャボン玉に未来が映った──。

 噂はすぐに広まって、神社には参拝者が続々と訪れるようになった。いつしか神社は、シャボン神社と呼ばれはじめた。境内は、人々の生みだした無数のシャボン玉によってキラキラと光り輝き、虹色に染まった。その幻想的な光景がインスタ映えすると話題になり、女子高生たちがこぞって神社に押し寄せてくるようにもなった。

ここにきて、神主には欲が出はじめた。もっともっとお賽銭を入れてもらい、大儲けをしたくなったのだ。そして彼は、こんな噂をひそかに流した。お賽銭の金額が大きいと、予言の精度は高くなる。よりたしかな未来を見たければ、お賽銭をたくさん入れたほうがいい……。

効果はすぐに現れはじめ、高額紙幣を投げ入れる参拝者が続出した。中には1万円札を束で投げ入れるような人もいて、神主は厳かな表情を装いながらも、内心では笑みをこらえることができなかった。

──いいぞいいぞ、どんどん投げろっ!

神主は最初のほうこそ、お金が集まれば壊れた社殿を修繕しようなどと考えていた。だが、いまや彼は高級な寿司や肉をたらふく食べ、外車を乗りまわしている未来の自分を夢想してニヤつくようになっていた。

そんなある日。満を持して、神主はお賽銭を回収しようと賽銭箱を開けてみた。中にはお金がぎっしりと詰まっていて、彼は興奮でめまいがした。

──うははっ、全部が私のものなんだっ!

 ところが、その次の瞬間だった。神主の眼前の光景が一変した。突然、すべてのお賽銭がひとつに溶け合ったかと思うと、それは大きなシャボン玉へと姿を変えてしまっていた。あぶく銭が、文字通りのあぶくになったのである。

 宙に浮かんだそのシャボン玉の表面には、さびれた神社の光景が映っていた。

 直後、巨大なシャボン玉はパチンと弾け、欲にまみれた神主の夢想も虚空に散った。

(了)


=========


 お粗末さまでした!

 プロットから作品完成に至るまで、セリフや心情、場面描写などを盛り込んで、さらに肉付けを行ってみました。楽しんでいただけていれば、幸いです。


 さて、いかがでしたでしょうか? みなさんも作品ができましたか?

書きはしたけど、これでいいのか不安だ。そんな方にお伝えしたいのは、創作に正解はないということ。まずは書ききったことに自信を持っていただきたいです。

まだだという方は、ぜひ今回ご紹介した方法で、とりあえず1作、書いてみていただければと思います。創作に対するハードルが少しは下がっていればと願うばかりです。

 初めの一歩を踏み出すことにまだためらいを感じてしまう方は、この方法をさらに詳しく解説した拙著『たった40分で誰でも書ける 超ショートショート講座』や『こども小説教室』も参考にしてみていただければと思います。もちろん、各地で開催している講座にも、いつでも気軽に遊びにきていただければうれしいです。


 創作は、書けば書くほどうまくなります。想像力も、いっそう磨かれていきます。今回の方法にとらわれる必要はまったくありません。ぜひこれをきっかけに自分なりの方法を見つけ、これからも創作に取り組んでみてほしいなと思います。

 どうか、楽しむことを忘れずに。

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