絵巻物語を描こう

 それからが大変だった。

 みんなで手分けして草葉を探す。

 朱ノ助も必死になって探す。

 

 どこに行きそうなのか?

 考えろ。

 

 相変わらず人が多い。走りにくい。

 人が多い?

 

 草葉は人気がない、静かな場所が好きだ。それもお寺とかそういう。

 朱ノ助はすぐさま若旦那のところに走って行ってお寺の場所とか比較的静かな場所とかを描いた地図を借りた。


 最初の稲荷神社。

 いなかった。

 

 公園。

 いない。

 どこにもいなかった。

 いったいどこにいるんだよ。

 

 そのとき、


 橋って言う言葉が頭の片隅によぎった。


 あわてて橋の上に行く。そして

「草葉~」

 って叫ぶ。

 

 橋の上から

 橋の向こう側の石にちょこんと座って川の流れを眺めている草葉を見つけた。

 あわてて草葉のそばにいく。草葉の隣に座る。


「冷静に考えたら、あんたもてるほど器量もよくないし、勉強もできないし、性格も変だし、からかわれただけだってことにようやく気付いたよ」

 朱ノ助は顔がほてる。

「自分でもわかってるよ。そんなこと、からかわれただけってことぐらい。自分でも自覚してるよ。お金も器量も何ももってないからもてる要素全然ないってね」


「そうそう」


「だったらいうけどさ。もてない男が女性の……その胸のあたり見て鼻の下伸ばすぐらいいいんじゃないの? もてない人間はそれぐらいもさせてくれないの」


 草葉は、あっははと笑っている。


 そうね。

 そのとおりね。

 いいんじゃないの。


 相変わらず草葉は笑う。しまいにはお腹を押さえて、痛い痛いと言い始める。

 しばらくして、草葉は

「まあ、あんたは色気も金もないんだから、せめて物語をかけるようになりなさい。分かったね」


「分かったよ」

 朱ノ助は続ける。


「若旦那とか探してくれてるから、一緒に安心させに行こう。そして一緒に謝ろう」


「分かった」

 

 それから若旦那のところに行き、散々怒られた。和尚にも怒られ散々であった。

でもそれから、野菜売りは結構順調になってきた。若旦那もにこやか笑顔で応対してくれる。皮肉も言われるけど。でもいい人だって最近分かった。

トラブルを乗り越えてお互いに性格や考え方が分かって連帯感が生まれて来たのだった。

 

朱ノ助の心に最近芽生え始めてきたこと

(せっかくお客さんに野菜をお金出してくれて買ってくれたんだからおいしいって思って欲しいなあ)

そんなことを思ってばかりいるから、気持ちが高揚してしまい、ミスを連発してしまうのだった。

                                    了

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幻想夢物語青春伝 澄ノ字 蒼 @kotatumikan9853

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