ぼた雪

音澤 煙管

寂しくなる前には、ぼた雪が舞う……




心切なく居る時は、

必ず一人の寒い季節。


気にしてはいないし、

何となく気がつく頃で。


何が物思いにさせるのか、

目の前には誰も居ない。


ただ吹く風が顔を撫で、

何度も急いで通り過ぎる。


人に触れたり撫でられたり、

好きではないから尚更に。


陽の光が薄くなり、

記憶が遠くの空に投影する。


一所懸命だった時、

何も考えて居なかった。


気がついたから今が在る、

遅い記憶の悔やむ時。


欲があったからかもしれないし、

求めて居た事があったから。


自心に負けて居たんだと、

この空の青さと一緒に在る。


高く青い空に洗われても、

雲に陰ると泣き出しそうに。


あの時の笑顔に隠れていた、

泣き出しそうな自心と同じ。


泣いた雲が冷やされて、

白く積もる冷たい気持ち。


ボタ雪の時に気がつけば、

こんなに苦しくは無かったろう。


雪が降らないこの町だから、

思い出の俯くだけの雪の色。


冷めた記憶の二人の姿を、

渇いた西風が運んでくる。


ここでは滅多に降らない雪も、

今夜には降りそうで。


今在る気持ちは、

ボタ雪を、

また見てみたい。


積もったボタ雪で、

今の自心を

凍らせておきたい……


ずっとこのままで。



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ぼた雪 音澤 煙管 @vrymtl

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