自己評価①

『お姉さん1人っすか?』

渋谷のセンター街を歩いているとどこから沸いてきたのか、香水臭い男が馴れ馴れしく話しかけてきた。


低身長で趣味の悪いアクセサリーをジャラジャラつけて、髪型で誤魔化してイケてる風に見せてるけど、どうみても中の下レベル


あぁこいつにとって私は簡単に声をかけれるような女なのか。


ただ歩いていた。それだけなのに勝手に女としての私を評価されたようで苛立ちを感じてしまう。


私は男から目を逸らして振り切るように早歩きになった。


しつこく話しかけてくるけど、イヤホンから流れていた音楽の音を大きくしてガン無視を決め込んだ。





『私って世間体で言ったらどのレベル??』

帰宅後、着替えもせずリビングのソファーに体を預けた私はちょうど対面キッチンで夕飯の支度をしている同居人Aに問いかけた。


『何その面倒くさい質問~』


同居人Aことナツキはレタスを洗う手を止めないまま、こちらを見る。


自分でも面倒くさい質問だと思う。


だけど、この質問に対して女の子を満足させる回答ができる男の子は一体どれくらいいるんだろう。


思ってなくても、◯◯ちゃんはすっごく可愛いよとか、正直に普通かなとか言っちゃう子が大半だと思う。


だけど、女の子が求めてる回答はそうじゃない。


それをきっと彼は知ってる。


だから彼ならなんて答えるのか知りたかった。



ナツキは面倒くさいと言いながら、面倒くさそうな顔なんて一ミリもせず“何かあったの?”と微笑んだ。


さすが包容力の男。


上手いかわし方を熟知してらっしゃるようで。


『あのね、今日渋谷でサルみたいな顔の男に、ナンパされたの』


『うん』


『声をかけるってことはさ、俺でもイケそうって思われたわけでしょ?』


仰向けに寝そべりながら天井に向けて伸ばした手の甲を見ると、先月やってもらったネイルが伸びきっていることに気付いた。


『なんか私ってこのレベルの男でもイケそうに見える女なんだって思ってイラついた』


次のネイル何にしようとか考えながら手をひらひらさせる。


『うーん、その人は単純にモモのことを可愛いと思ったから声かけたんじゃない?』


『でも、私だったら自分のレベルに見合ってない男の人にアプローチなんて出来ないよ』


『女の子はそうだろうけど、男って自分のレベルに見合ってなくても声かけちゃうんだよ。自己評価甘々なの、お馬鹿さんだからね』


ナツキはサラダを盛り付けながら、そう言ってハハっと笑った。


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桃~曖昧な陽だまり~ 宮瀬だん @sjon1024

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