ロクでもな異世界

「この野郎!」

助けてくれたのはおじさんだった。

「おじさん?」

「クロ!逃げるぞ!」

そう言って鍬を片手に俺に手を貸す。

「逃げるぞ!」

「無理だ。俺は鈍い。逃げるだけ無駄…」

「馬鹿野郎!そういうのは失敗してから言え!」

引っぱられる。

そうだ。

失敗しても良いんだ。

ムダなんて後で決めれば良いんだった。


そんな事を考えていると……


『ガァ!』


鳥の怪物が反逆した。

今度は俺でなく、おじさんを捕まえた。

「おい!何する!」

抵抗するおじさん。

「おい…おじさんを放せよ!」

しがみ付くが無駄だった。

おじさんが攫われていく。



あぁ、クソ!

何でこんなんなんだ⁉

せめてもの抵抗に石を鳥に投げる………と。




『ギャァァァ』




怪物が消し飛んだ。





「何だコレ?」

他にも迫って来た怪物に闇雲に石を投げる。



『『『ギェェァァアアア!』』』



怪物達が軒並み消えていった。













彼は知らなかった。

『スキル:ロクでもない素晴らし異世界』の正体が『ロクでもなさに比例して物や能力を向上させるもの』だという事を。









スローライファーのクロは終わり、

異世界勇者クロの物語が始まった。


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ロクでもない素晴らし異世界 黒銘菓短編集56弾 黒銘菓(クロメイカ/kuromeika) @kuromeika

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